memo
□初恋です
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※生徒×教師
高校の設定で
「上條先生、質問いいですか?」
連続記録、更新。
最近2年生の草間野分が、毎日質問に来る。
今日で連続3週間の記録達成だ。
医学部を目指しているらしくかなり頭が良くて飲み込みも早い。
文系が苦手だとの噂だったから勉強熱心なやつなんだと単純に思っていたが、こうも毎日だとさすがに不審に思う。どうも無理やり捻り出したらしい質問が多いのだ。
が、勉強しに来る奴を邪険に出来る筈もなく、目で促して座らせる。
「で、どこが分からないって?」
「あの、ここの助動詞はこの場合完了なのか存続なのか…」
指差す所を見れば、みんながつまづきやすい所だった。
「あぁ、これはな、―――」
つい、長々と説明してしまう。
違う助動詞の解説なんかもして、気がつくと30分以上経っていた。
「悪いな。長くなった」
「いえ、上條先生の説明は分かりやすくて好きです」
“好き”の部分に力を込めて力説された。
単純に教師として嬉しい。
「そっか」
「はい」
草間は大きく頷いた。
「っていうかさ、お前理系だろ?」
「はい」
「毎日毎日古文だの現文だのって理数系の勉強はいいのか?」
「数学と理科は得意なんです。でも国語は全然で……」
「そうか?十分だと出来てると思うけど」
「いえ、まだまだです!」
草間が大きな声で言って、面食らってしまった。
そんなに勉強熱心なやつなのか。
草間はすぐにしまったという顔をした。
「すいません、大声出して…」
「いや大丈夫だけど」
「だから、あの、また質問に来てもいいですか?」
大きな体を小さくして、伺うように言うから、思わず笑いそうになってしまった。
何だこいつ、犬みてぇ。
「あぁ、また来い」
「はい!」
パタパタと尻尾を振る様子が見えて、また笑いそうになった。
宣言通り、俺は毎日足繁く上條先生の元に通っている。
先生に言ったことは本当だ。俺は文系科目が弱い。
でも、一番の目当ては先生の分かりやすい解説ではなくて、先生自身だった。
下心ありで、俺は先生を慕っている。教師と生徒、そもそも男同士ということで悩んだけど、友達に相談したらそんな悩みも吹き飛んだ。
親友の忍は宮城先生にアタックしまくって落としたらしいから。
今は冬休み前、だ。
休みの間は先生に会えない。
俺はある決意をしていた。
先生に告白しよう、と。
さり気なくスキンシップを図ってみたり、物理的な距離を縮めてみたりと俺なり頑張ってきた。
最近、先生の反応がいいのだ。
近づくと頬を染めたり、野分って呼んでくれるようになったり。
名前呼びは俺が拝み倒したんだけど。
ガラリと職員室を開けた。
「上條先生」
見回したけどいない。
「上條なら資料室だぞ」
宮城先生にそう言われて、俺はダッシュで資料室に向かった。
先生は、すぐに見つかった。
ちょっとしたイタズラ心で、ゆっくり近づいて、耳元に話しかけた。
「先生」
「わっ」
振り向いた上條先生に、俺は固まってしまった。
上條先生は、ポロポロと涙を流していたのだ。
大きな茶色の瞳から、次々と涙が零れ落ちる。
「あっ、わっわりぃ。これは、その…」
最後まで聞かずに、俺は堪らず先生を抱きしめた。
「えっ、ちょっ、野分?」
あたふた慌てる先生をよそに、更に腕に力をこめる。
「そんな風に泣かないで下さい」
「野分……?」
「泣くときは俺の隣で泣いて下さい」
「は?ちょ、え?」
「先生、俺は先生のことが、―――」
「離せ!」
「痛っ」
先生の拳が頭にヒットした。
「コンタクトズレて痛いんだよ離せ。……あ、取れた」
「コンタクト……」
全身から力が抜けた。
「それで、お前何の用だっけ?」
「ちょっと告白しに来ただけです…」
「え?何て?」
無事告白できたのは、3年生になってからだった。
終われ
ボツ理由
クオリティが低すぎた
竜頭蛇尾とはこのこと
でも晒す勇気