memo..

□薬指の称号
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「ヒロさん結婚しましょう」




そう言うと、ヒロさんはちょっと目を見開いて驚いた後、へらりと笑った。

何でそんなことを言ったか分からない。

俺も酔っていたし、多分ヒロさんも相当酔っていた。

だから、ヒロさんに言われた言葉に面食らってしまった。

「いつ式挙げる?」

楽しそうに言うヒロさんを、俺はたまらず後ろから抱き込んだ。

「もうちょっとで休みが取れるんでその日にでも」

「じゃあいっそのことアメリカとか行くか」

「そのままハネムーンとか」

「俺英語しゃべれねえ。でもお前が話せるか」

「任せて下さい」

「ミッキーに会いたい」

「ディズニー行きますか?」

戯れに指を絡めて、延々とそんな話をした。

こんなヒロさん、普段なら有り得ない。

明日になったら忘れているかもしれない。

それでも、楽しい。




「…ヒロさん結婚して下さい」

「それさっき聞いた」

「好きです」

「それは聞いてねえ」

声を上げて笑うヒロさんを、ぎゅっと抱きしめる。




結婚できたらいいのに。

この人は俺のものだっていう、確固たる証が欲しい。




そんなことを思っていたら、ぐるりとヒロさんが振り返った。

「じゃあ、はい」

「え?」

左手を差し出されて、俺は困惑した。

「そんなに言うなら、証」

どうやら声に出して言っていたらしい。









「………ヒロさん、愛してます」









薬指の







落とした唇が、誓いの証。





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