短編
□rely on me
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「あの……俺が担当してた子が、亡くなったんです……」
「うん」
野分は弘樹の肩に顔をうずめた。
泣いている気配がしたが、弘樹は何もいわなかった。
「少し前まで元気だったのに……俺に…将来の夢とか語ってくれて…」
「うん」
「……助けられなかった」
弘樹は、ゆっくりと野分の背中をなでた。
なるべく、優しく、優しく。
「お前は、やれるだけやったんだろ?助けようと全力で頑張ったんだろ?」
「……はい」
「それとも、その子の両親に責められたのか?」
「いえ……ありがとうと感謝されました」
「それが答えじゃないか。だから泣くな。お前は笑ってる方がいい」
「…はい」
「でもな、俺の前で我慢するな。泣きたい時は思いっきり泣いとけ」
「………はい」
はあと弘樹は大きく息を吐いた。
「お前忘れてるみたいだけど、とりあえず俺に言えって言ったろ?……俺は…俺は、ずっとここにいるから」
野分の肩が小さく震えた。
「………はい」
野分の小さな返事が、耳元に届く。
「……はい、ヒロさん」
俺は、野分の強さも弱さも全部受け止めるから。
俺の前では何も我慢しなくていい。
嫌なことがあるなら全部俺に吐き出せばいい。
そう伝わればいいと、野分をぎゅっと抱きしめた。
end.