Dream 2

□君がいれば
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[風間/切→甘/幕末/純血の女鬼]






・-・*・--・*・-・






(まだ、どうか、どうか)




視界に入ったのは、地に倒れた、愛しいあの人の姿




「頭領…ッ!」




桜が急いで駆け寄れば酷い怪我だったが、まだ息はある


紺の着物のその少女は荷物から里に伝わる塗り薬と丸薬を取り出し、まさに応急処置ともいえる手当てを始めた




「お気を確かに…しっかりなさって下さい…!!」




────桜は、想い人である風間が蝦夷に渡る、そう告げた瞬間ひどく狼狽した


彼は、とある人間を余程気に入ったらしい


またその人間と恋仲になったのは純血の女鬼とのこと




(どうして…何故、そこまで彼らに執着するのでございますか)




所詮、鬼と人間は相容れないもの。幼い頃から曾祖父から言われてきた言葉が脳裏に蘇る


視界の端で、困惑したように佇むのはその2人




「…土方さ…」




「…行くぞ」




戦いの末、互いにけして軽くはない傷を負ったのだろう、土方と呼ばれた人間は腕を押さえながら女鬼と思しき少女を呼び、ゆっくりと立ち去った




「…頭領…」




目の前の人が倒れた理由は、彼が唯一認めたあの人間と命を懸けて戦ったから




その挙げ句に果てることは彼にとって本望に近しい結果になると思う、が桜にとっては彼がいなくなることが酷く恐ろしく感じられた




(冷静に、まだ、彼の息は、あるのだから)




自身に言い聞かせるように血にまみれた彼の大きな手に自分の小さな手を重ね、涙を堪える


すると不意に、微かに指先が動いたような気がして、少女は俯き加減だった顔を上げればこちらを映す紅の瞳






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