Dream 2

□もし。
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もし戦場で、知り合いと、友人と、はたまた家族と出会ってしまったなら私は一体どうすれば良いのだろうか。



「薫…」



「桜、一緒に行こう?」



手を差し出すのは、幼い頃以来会っていなかった兄。



しかし、ここは戦場で、今も仲間達は必死の思いで刀を振るっている。



「私は、行けない」



「どうして?
別にこの戦から逃げろなんて言っていない。
お前が戦いたいなら戦えば良い。
お前が仲間だという、あの人間の集団に加担すればいい」



言いながら薫は、私の小太刀と対になる刀に手をかける。



「でも、考えてみなよ。
力も無いお前が残った所で戦局は変わらない。
むしろ敵陣をうろうろされれば目障りだ。
ならいっそ、早々に戦線離脱した方が身のためだろう?」



「…それでも、私は」



薫の言うことは理解出来る。



まともな成人男性ひとりを相手に戦うのだってやっとなのに、大量の羅刹なんて返り討ちに会うことだろう。



「彼らと共に、」



「桜は此処で死にたいの?」



理解出来ないというように私をみる薫の表情は哀しみに満ちていた。



この離れ離れになっていた間に、私達は変わってしまった。



今まで見てきたものも、感じてきたことも違う。



だからこそ互いの考えも信念もずれて噛み合わない。



「ごめんなさい」



「こんな所で桜の、お前の命が果てるくらいなら、俺が、」



私も小太刀を握り締め、薫に面と向かう。



「なあ、桜…どうしても、一緒には行けないのか?」



「私には、大切なものを守らなければいけないから」



「そう…」



もし戦場で、知り合いと、友人と、はたまた家族と出会ってしまったなら私は───────。







地面に紅が広がる。





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