Dream 2
□もし。
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あかい、あかい。
「桜…、桜…」
薫が涙を浮かべて私の顔を覗き込み、私の名を大事そうに呼ぶ。
「…桜…」
でも、それもだんだんと霞んでいってしまって、薫の声も遠くなる。
『かおる、ありがとう、わたしを、みつけてくれて』
うまく薫に伝わったか、分からないけれど懸命に口を動かした。
傷口の熱も感じなくなって、指先の感覚ももう無い。
もし戦場で、大切なものと斬り合わなければなら私は、喜んでこの身を差し出そう。
それは弱虫な私の逃げ道。
相手に恨まれるくらいなら、私が倒れれば、私が死を受け入れ、恨むことを止めればそこで弔い合戦は終わる。
一方で、それは私の臆病な弱さ。
相手の死をみるくらいなら、私が死ぬ方がずっとずっと楽だから。
最後に、それは私の唯一の復讐。
相手の切っ先に、私の血肉の感触を残して、相手の心の奥底に潜むのだ。
((さようなら、私の大切なモノ達))
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