Dream 2

□咳と遊女と沖田の話。 
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彼自身、自分の咳が病のものだと分かってからも剣を振るうことは止めず、所属する新選組の一番隊の長としてつとめ続けてきた。



それから彼が再び桜のもとへ訪れたのは、お世辞にも早いとは言えない年月が経っていた。



「あの子は、前の秋に…」



「え、?」







《この子を向こうの部屋へ早く移して!》
《こんなに咳が出るなんて、風邪?それとも労咳?》
《何でもいいわ、うつる前に早く!》



吐血した桜は、奥のさらに奥の部屋へと隔離され、感染を恐れ人の足は遠のき、食事なんてものはまともに与えられず、



桜はあっという間に弱っていった。



「沖田様…」



何度目を覚まそうと、迎え入れるのは死を待つだけの残酷な朝。



毎日彼の隣でしていたように、三味線を奏で酒を注ぐ動作を真似てみるが、それすらも日に日に出来なくなっていた。



「もう一度だけ…叶うのならば…」



決して他の客のように乱暴に扱わないでいてくれた優しい彼。



無理矢理帯を外すこともせず、


桜が金で買われる“遊女”である以前に“人”であることを証明しようとするように、


ただただ彼女を酒の席の話し相手のように接してくれる彼の存在は荒々しい日常の中の救いだった。



「最期に…、



…沖田様に、



…会いとう御座いました…」





─────どうかお達者で。





痩せこけた手に力は入らず、空の徳利が畳の上に転がった。






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