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□刹那の時
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嫌われれば、嫌いになれるって思ってた。


〜刹那の時〜


グレイが好きだと気づき始めたのは、極最近のことだった。
しかし気づくことがどうも遅すぎた。


だってグレイにはもう愛する人が決まっていたのだから。
こんなのただの好きになるのが早かったもん勝ち。仕方がなかった。どうすることも、出来なかった。

この気持ちが吹っ切れるのなら、いっそのことグレイを傷つければ俺もグレイを嫌いになれるとその時は本気で思っていた。


「テメェがいると虫の居所が悪くてなぁ?」
「…何が言いてぇんだ、お前は。」
「邪魔だっつってんだよ、グレイ。」


嫌いにならなきゃ諦められない。
嫌われなければ失えない。

必死になってグレイに傷を増やさせた。
後少しで終われると、後少しで楽になれると…気持ちは焦る一方で全くグレイの気持ちなど考えてもいなかったんだ。



あれから一言も口を聞かなくなるくらいに傷つけた後の事だった。



依頼の途中、列車事故によりグレイが還らぬ人となったのはーー…。

嬉しかった。
おかしかった。
楽しかった。


全然そんな理由じゃないのに笑えてくる。泣けてくる。


どうして。
何故。
嘘だ。


死んじまったら、もう何もかもがお仕舞いだ。


死んでほしかった訳じゃない。
ただ自分の気持ちに蹴りをつけたかっただけで、グレイに嫌われるためにあんなこと言っただけで本当は…本当は。


























とっても好きだった。




















俺にとって失いたくないほど大切で何よりも大きな存在だった。

「…なんでっ、死んじまうんだよあの馬鹿ッ!」

言えないじゃないか。
嫌いだって。
言えないじゃないか。
嘘だったって。


本当は俺はお前が前から大好きだったって…。



言えないじゃないか。























こうもあっさりと人は死んでしまうのか。
「死にたい」と望んでもいないのに死んでしまうのか。
理不尽だ。こんなの…。
こんなのってねぇよ!?






還ってこいよ。
いつもみたいに。
殴ってこいよ。
酷いくらいに。


もうあんなこと言わないから、だから、お前がいないと生きる意味がまるでない。


頼むから一度だけでもお前に会いたい。


「グレイ、がね…好きだったって。」


え?嘘だ、だって俺はあんなにも残酷な言葉でお前を苦しめて…。

「好きだったって、ここに書いてあるんだよ。」

ルーシィから一枚の紙切れを受け取れば、豆粒くらいの小さな字が刻まれている。
それはやがて滲み出し、くしゃりと俺は握りしめ初めて声を出して泣いた。


戻ってこい。
還ってこい。
頼むから。


そしたら次は
大好きと、愛していたと、お前を抱き締めて言ってやりたい。



その日は声が渇れ果てるまで子供のように泣きじゃくった。
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