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□純情と鈍感
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2月14日

この日は女の子の純粋な恋心と負け犬共の邪な嫉妬が交わる日


バレンタインデーである


法国アルテリアも、その温度差のある空気が渦巻く中、リース・アルジェントはいつもと変わらぬ表情で佇んでいた


(………)


現在、彼女は消費アイテムの補充と任務の打ち合わせを行うという目的で、相棒の¨守護騎士¨の到着を待っていた


勿論、建て前である

(…うん…大丈夫、大丈夫…)


今日の彼女の目的はただ一つ
¨チョコを渡し、日頃の世話になったお礼を言う¨
何回目になるか判らないシュミレーションを頭の中で終え、ふと、辺りを見回す

(……ツンツン緑は…まだ見えないですね…早く来すぎましたか)


(…あ、崩れたりはしてないかな……?)


ポーチの中にある丁寧に包装された菓子を確認する


(………うん、大丈夫)


「お、リースー!」

「!!」


「やっぱリースやったか、悪いなあ、遅くなった」


「…大丈夫、そんなに待ってない」
(…落ち着いて、冷静に…)


「?、そっか、なら良いけどな、…ん?、リース、それなんや?手に持ってるやつ」


(!!)
「…これは……」


「……あ、お前のおやつやったか」


「………え?」


「タイミング悪かったな〜、食い始める時に着いちゃったか」


「……」


「あ〜でも菓子ばっかり食ってたら腹でてくるで、気をt「はあ!!」


メシャ


全900ページ以上ある聖典の背表紙(かなり固い、むしろ硬い)を全力で鼻っ柱に叩き込む
あっ、少しめり込んだ


「ぎゃああああ!」




「…な…んで……がふっ……」


バタッ


「………ふんっ」


デリカシーやムードの欠片も無い言葉、
今日という日に包装された菓子を持っている私を見ても何も考えつかない鈍さ

極めつけは最後の禁断の女性に向かってデブ発言


完璧な0点です


「……馬鹿ケビン…」


いろいろ規格外のこの男にはこんなイベントはまだ早かったみたいで、感謝を伝える気も失せた私は、回復の法術を軽くかけたあと、チョコを摘みながら帰路に着くのでした









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