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□継ぎ接ぎの思い出
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ゴソゴソ


「……あれ?」


軽く掃除をしようと思い始めたら何時の間にか¨軽く¨が消え去っていて、マスクをつけてまで部屋の収納の整理に手を着けていたら、予想外に面白いものがみつかった



「懐かしいなぁ、これ…」



収納の奥から発掘したものは、色褪せてしまって継ぎ接ぎだらけだが確かに昔愛用していた、ポムのぬいぐるみ



コンコン

「クローゼ、今大丈夫ですか?」


「あ、はい、多少埃っぽいですけど」



収納を何時から掃除していないのか覚えていないが、収納の奥には目で見た瞬間判る量の埃が積まれていて、大気を泳ぐ埃の量もかなりのもこだった


ガチャ

「…うわ…、窓は開いて…ますね」


「マスクもう1枚あるから貸しますよ、それでご用件は?」


「あ、ありがとうございます、用件…という程でなくて、良ければ一緒に昼食でもと思いまして」


「昼食…?もうそんな時間です……ね」


掃除を始めたのが9時、現在は時計の針と針が1番上で重なって少し回った時刻


「ああ、¨貴女は掃除をしたら徹底的に¨、ってタイプでしたね」


「ええ、抜け出せなくなってしまいました…」


「まず昼食をとった方が宜しいですよ…って、そのぬいぐるみまだ持っていられましたか」


「あ、これですか?、先程見つけました?」


「懐かしいですね、確か私が買ってあげたヤツです」


「…………?」


「流石にもう5歳の時の記憶は曖昧でしたか、昔2人で雑貨屋で買い物をしてる時に貴女がずっとコレを見てたんですよ?」


「…うーん…限りなく曖昧で断片的にしか…」


「それで買ってあげるといっても遠慮して、城に帰った後にしょげていましたよ」


「ああ、そこはなんとなく覚えていますよ」


「それでその後、私がコッソリそれを買って…」


「…何故か枕元にありましたね」


「照れくさかったのでしょう、買ってあげてそれからはずっとお気に入りでしたね、破けたら繕って、色褪せてきて新しいの買ってあげると言っても断って、捨てると言うと泣き出して…」


「ふふっ、昔は可愛気がある子供でしたね」


「私から見れば今の貴女も可愛気のある子供ですよ、クローゼ」

「もう!、子供扱いしないで下さい!」

「ははっ、申し訳ない」


「まったくもう…」

「…おっと、もう時間ですな、クローゼ、そろそろ失礼します」

「あ、はい、お仕事頑張って下さい」


「クローゼも程々で掃除は切り上げて下さい、では、失礼します」


ガチャ

バタン!



「…ふふっ……」



ぬいぐるみの方に視線を向ける
最初は正直、捨てようかと考えていたが、あの人が買ってくれたものだからという簡単な理由で保存すると決めた自分に、自然と笑いが込み上げる


(久々に寝るときに使っみようかな?)

呑気にそんなことを考えていた時に唐突に思い出した


(……あ、そういえば、何でユリアさん来たんでしたっけ?)


(…………)


「…あ」











(まさかまだ持っていたとは…)


会議の最中にふと、先程の出来事を思い出し、物持ちのいい主君に感心する

だが今はそれより



(…やはり先程クローゼの部屋に行った理由が思い出せない、……まだそんなに年でもないのに…)


自分の硬さとはまた違う頭の働きの悪さに軽く絶望した時


グウウゥゥゥ


「!!!」


「ん?、あれ?、大尉昼飯食べてなかったですか?」


「………」
(………しまった)



理由を思い出し、さらに絶望する


会議の後、クローゼがジークに預けた簡単な菓子パンをもらったので午後の仕事中、ずっと空腹という最悪の展開は免れた













 
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