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□曇りガラス越しの本心
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「……ん…?」


「あ、起きましたか、ユリアさん」


「……確か…」


「はい、何時の間にか…」


「…そう…でしたね…」



夕方になって公務も一段落つき、少し休憩しようかと思っていると、仕事が早く終わったとユリアさんが来て、適当に雑談を交わしている内によほど疲れが溜まっていたのか、何時の間にか寝息を立てていた



「はい、お水です」

「…ありがとうございます」


「随分と汗をかいてますね…何か悪い夢でも見ましたか?」

「…はい、…アレが現実なら、耐えられない様な酷い夢でしたね」


「本当に良かったですね、それが夢であって、…差し支えなければ内容を聞かせて貰っても良いでしょうか?」


「別に構いませんが…、先にシャワーを貸して頂けないでしょうか?酷く汗臭いものですから…」


「あ、はい、どうぞお使い下さい」















〔シャーーーーー!〕


「タオル類ここに出しておきましたよ」


〈あ、ありがとうございます〉


「良かったらお湯を沸かして温まっても良いですよ?」


〈いえ、大丈夫ですよ、お気遣いなく〉


「後、軍服は宜しければお洗濯しておきましょうか?」


〈いえ、そこまで迷惑を掛けるワケには…〉


「1人分も2人分もさほど変わりませんよ、洗濯、しておきますね」


〈…申し訳ありません、お願いします〉

「はい、それではごゆっくりどうぞ」


〈………クローゼ〉


「あ、はい、何でしょう」


〈先程の悪夢の話…聞いて頂けますか?〉


「…はい」


〈あれは…貴女が…私の前から忽然と消えてしまった…という内容でして…〉


「私が…?」


〈はい、只、それだけです……それが、どうしようもなく怖かった…〉


「……………」


〈クローゼ…?〉


「…えっと、………なら、ユリアさんは…わ、私がいない現実は耐えられないって…思ってくれているの…ですか…?」


〈はい、軍人としても、ユリア・シュバルツ個人としても、貴女が私にとっての人生そのものです〉


「…………」



(…き、聞いているこちらが恥ずかしくなりますね、よくもまあ、臆面もなく…)



恐らくは本心だろうが、恥ずかしい台詞の割に、声色の変化がないのが何故か知らないが多少腹が立つ



「…安心して下さい、ユリアさんが、そう思っていてくれている限り、私は何処にも行きませんよ」


〈…その様にことを言われたら自惚れてしまいますよ?〉


「…なんならストレートに言わせて戴きますね?」


〈?〉












「大好きですよ、ユリアさん?」





〈………!?〉



浴室から発する慌てたような音を聞きながら、"どうぞ自惚れて下さい"、と言葉を残し洗面所から出る


先程の恥ずかしい台詞の仕返し、と銘打った気持ちは曇りガラス越しだからこそ言えたこと


この本心を目の前で言えるのはまだまだ先みたい、と、真っ赤になった顔で考える











 
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