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□子供の愛情表現
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「…クローゼ?」


「はい、何でしょうか?」


「…あの……えっと……その…」



「…?」



珍しいことにあのユリアさんが口ごもっている、余程言いにくいことなのか、または余程話したくないことなのか



「…お忙しいとは存じますが…あの…服…を…買いに行くのに…付き合って貰えない…でしょ…うか」

「…え?、ふ、服…ですか?」


「え、ええ…私…服屋のあのキラキラした雰囲気が…もの凄く苦手でして…あの、駄目…ですか?」


「そのくらいなら別に…今からでも大丈夫ですけど…」


「ほ、本当ですか!?お願いします!」


「は、はい…」









急な話で理解が追い付かない私は買い物の構想を練る意味も含めて、先ずは近くのカフェへと向かい、詳しい話を聞かせて貰った



「なる程…寄ってくる店員さんが苦手なんですか…」


「ええ…、だから服は極力買わないでいたのですが、もう大分くたびれてきたので」


「ふむ…、話は判りました、お付き合いしますよ」


「あ、ありがとうございます…」


「それで、買いたい服のイメージってありますか?」


「イメージ…ですか…」

「ええ、イメージが出来てると選びやすいですよ」


「ふむ…、……楽で…あまり派手でない服がいいですね」


「なる程…」


「…こんなのでよろしいでしょうか?」

「十分ですよ、早速行きましょうか?」


「あ、はい、お願いします」









東街区にあるマーケットの女性服売り場に確かユリアさんの言っているような服が有ったのを思い出して来てみたら案の定、充実した買い物になりそうで此方も嬉しい



「…これなんかどうです?」


「ああ、良い感じですね」


「…ふと思ったんですけど、ユリアさんの私服って私見たことないんですよね」


「基本的にクローゼに会う時は軍服ですからね、無理もないです」


「一度見てみたいですね、私服のユリアさん」


「…それよりクローゼ、誘っておいて何ですが、今日のコレで公務に支障はでませんか?」


「最近は大分落ち着いてますから、それに市民の皆さんの様子を見るのも大事ですからね」


「なる程…良かったです、…では、お会計してきますね」


「あ、はい、私は先に出てますね」


「…変な男に絡まれたら斬り捨てていいですからね…?」


「あ、はは…」











その後、特に変な男に絡まれることはなく、余程良い買い物が出来たのかホクホク顔のユリアさんが戻って来た



「良い買い物が出来ましたよ、本当にありがとうございました、クローゼ」


「それは良かった、喜んでくれて私も嬉しいです」


「お礼に夕飯はご馳走させて下さい、この前美味しい東方料理の店を見つけまして」


「お言葉に甘えさせて頂きますね、…あとユリアさん、コレ…良ければ受け取って下さい」



差し出した物は青色のマグカップ、先程ユリアさんを待っている間に雑貨屋で買ったもの



「マグ…?私に?」


「はい、…ご迷惑でしたか?」


「いえいえ、ありがたく頂戴します、ありがとう、クローゼ」


「良かった、…それ実は私の分のマグカップとペアなんですよ、大事にして下さいね?」


「勿論ですよ、では、参りましょうか?」


「あ、はい、ご馳走になります」



実は先程贈ったペアマグは同じ飲み物を同じマグで同じ場所で飲めば2人の距離が縮まるという、胡散臭い代物


でも、実際は効能や効き目は大した関係なくて、只単に同じものを共有するのが楽しいだけだったりする



我ながら愛情の表現が子供なのは周知の事実です













 
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