東方

□みょん料理!
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「咲夜さんって…カッコイイですよね…」


「どうしたのよいきなり、褒めてもお茶くらいしかでないわよ?」


「あ、"みるくてぃー゙がいいです、あの甘いお茶で」


「はいはい…砂糖は多めでミルクはたっぷりよね」



湖のほとり、白い霧の中に堂々とそびえ立つ紅色の悪魔の館、紅魔館
もはやメイド長の肩書に収まらないほどの重鎮として、多忙な日々を送る十六夜咲夜は、押しかけてきた友人にして苦労を分かり合える同士、魂魄妖夢と束の間、憩いの時間を過ごしていた



「はあ〜…おいしい〜、家でも淹れてみたいけど、多分私じゃ無理でしょうねー」


「飲ませておいて悪いけど、それ美味しいかしら?すっごく甘くなっちゃったんだけど…」


「いえ?私は好きですよ?」


「そう…、やっぱり貴女紅茶はちょっと向いてないかもね、緑茶と煎餅が似合ってるわ」


「あはは、やっぱり!」


「…で、今日は何の用?また剣の相手でもさせるつもりかしら」


「いやいや、今日は違いますよ、別件です別件」


「そう…残念、また貴女の可愛い泣き顔が見れると思ったのだけど」


「泣いてませんよ!」



一昨日、妖夢は修業と称して、紅魔館を訪れ咲夜と剣を合わせていた、圧倒的なまでに妖夢を粉砕した咲夜は、どうせリベンジを懇願しに来たのだろうとナイフを研いでいたが、どうやらその目論見は外れてしまっているよう



「違った?それ以外に貴女が此処へ来る用事って何かしら?」


「いやー、ちょっと個人的なお願いなんですけど、お時間大丈夫ですか?」


「んー…、時間はどうにでもなるけど、内容によるわ、私に出来る範囲なら良いけど、取り敢えず言ってみなさい」


「あ、はい!実は不肖、魂魄妖夢、咲夜に料理をご教授していただきたいと思ってまして!」


「…料理?」


「はい、あの、私和食はちょっと自信あるんですけど、お恥ずかしながら、洋食とか中華とかてんでダメでして…」


「まあ、得手不得手は仕方ないわね」


「流石に“あの”幽々子様でも和食だけじゃ飽きてきちゃうかと思うんですよ」


「あの、ってのが少し気になるけど、まあ、事情は分かったわ、頼ってもらって悪い気もしないし」


「あ、じゃあ…」


「…でも、ごめんね、悪いけど無理なの…」


「……………みょん!?」



まさか断られるとはまったく微塵も思っていなかったのか、妖夢はバツの悪そうな顔の咲夜の柔らかくも明確な拒否を聞いて数秒後、素っ頓狂な声をあげ、目を白黒させていた



「えっと…何か理由があったりします?」


「…別に意地悪とかじゃないのよ、妖夢に料理を教える、これは問題ないし、私も悪い気はしないわ」


「……えっと…ならどうして?」


「特段、教えることがないのよ、貴女はもうレシピさえあれば完璧に調理出来る腕がある、自信を持っていいと思うわ」


「そ、そんな、買い被りすぎですって!」


「だから、はいコレ」



咲夜から渡されたものは厚い紙束
網紐で丁寧に綴じられている冊子で、使われている紙は汚れなく真っ白、見るからに新品と分かる、手作りの冊子だった



「…何ですか?これ?」


「私の知ってるレシピで、比較的簡単なものを纏めたものよ、少しは役に立つでしょう?」


「え…これって何時作ったんですか?すごくきれいで新品みたいですけど…」


「ふふっ、だって、今作ったものだもの」


「……いやー、まさかここまでしてくれるとは…」


「他ならぬ貴女の為だもの、この程度しかできなくて申し訳ないけど、どうかしら?」


「…やっぱり、咲夜さんはカッコイイです」


「瀟洒、って皆は言うわよ?」



その日以降、白玉楼の食卓は毎日豊かに彩られ、とある亡霊の腹も心も存分に満たすこととなった
いつの日か、瀟洒なメイドが白玉楼を訪れた時に、磨き上げた手前を褒めて貰えるように
妖夢は今日も、包丁を握る








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