7th DRAGON2020

□世界が凪ぐ間に
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「…………」



風が大きく唸りをあげいる都庁の屋上、錆一つ無い真新しいフェンスに背を預け遥かな空を仰ぐキリの姿があった



「見つけた」



意識の外から凛とした声、辺りに響くイオリの声がキリの聴覚を揺する



「……よお、どうした?」


「用はないの、なんとなくアナタがここにいるかなと思って」


「なんとなく…ねえ……」


「なんとなく、ね」


怪訝な顔をするキリなど気にも止めずに笑顔で詰め寄り、同じようにイオリはフェンスへと体重を預ける、ギシッ、とフェンスが軋みをあげる



「良い天気だね」


「そーだな」


「今日はヤクモさん達が探索に行ってくれるって、私達はお留守番」


「オッサンか…大丈夫なのかねぇ…」


「あはは…信じてあげようよ、カズもアンズも付いてるんだし」


その言葉を最後として、二人の会話は止まった、互いに口を開けることなく、勢い止まぬ風がただ通り抜けていく



「…なあ、イオリ」


「ん?」


「……死ぬなよ」


「…………へ?」



数秒の沈黙を経て、口を開いたのはキリだった
常より深く被ったフードで表情を覆い隠しながらイオリへと問いかける



「……死んでくれるな、もうこれ以上の骸を背負うのは懲り懲りだ」


「…うん、約束する、何があっても生きる、這いつくばってでも生き延びるよ」

「……だからキリも、私達を置いて行かないでね?」


「……は、善処はするさ」



一瞬、風が止み、壊れた世界が凪いだ、そんな気がした












 
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