お題小説

□欲しくない
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欲しくない














いらねーや























穏やかな昼下がり。大抵の人ならなごやかな気分に包まれるだろう。


…大抵の人なら。











ここに大抵の人に入らない人間が一人。









「くそー…」

吾代である。今してることといえば椅子に黙って座っているだけで…要するに事務所の留守番を押しつけられたのだ。しかも理由が理由だ。




「ヤコが試験とやらで来れないと言いだしたのだ。明日まで雑用をしておけ。我輩は忙しいのでな」


というのがネウロの有無を言わせぬお願い事(?)だった。反抗しようとした瞬間、手が刃物のようなものにかわって自分の方に振り下ろされそうだったため、引き受けてしまった。













雑用と言っても掃除するほど汚れてもいないし、仕事の依頼は全部ネウロの判断がいるのですべてに『検討中』の返信をして…といったところで、暇にもほどがあった。

何もしないというのも結構疲れるものなのだ。














少し前まではこんなことはなかった。

毎日何かしら暴れていたし、それが金にもつながっていた。

平穏や安全とかいう言葉とは無縁だったし、欲しくもなかった。


それが今となっては、今まで一番遠かった『それ』が当たり前になりつつある。

吾代は、そんな自分に少し憤りを感じながら生活していた。

みじめだとも思った。







ことあるごとに呼び出され使われ…





こんな平和な環境に、飼い馴らされているような自分が、吾代はみじめでしょうがなかった。
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