お題小説
□怖くなんかない
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好きな人がいれば怖いものなんてないし、怖いことなんてない
それが
当たり前な恋だと思ってた
『怖くなんかない』
今日は、ここ最近珍しいくらいの土砂降りで、せっかくの休日だというのに弥子はうきうきできない。
そもそも、休日というものにすっかり縁のない日常を送らざるを得ない状況だが、それでも日曜日は嬉しかった。
こうひどすぎる雨だと依頼人なんてくるわけない、と適当な感覚で思うが、そんなことをあの魔人が許してくれないことくらい弥子にはよくわかっていた。
こうやって事務所に向かうだけでも危ないのだ。風がひどいとかそういうわけではないのだが、とにかくすごい雨の量。せっかくの私服が台無しだ。もう帰りたいと思っても、後のことを考えるとどうしても先に行くしかない弥子は、少しでも早く建物に入ろうと走り出した。
「あ」
「遅いぞ」
事務所の近くのコンビニの前で、ネウロが傘をさしてたっていた。
「…どうした?」
「いや、なんか、似合わなくて」
「何がだ」
「傘」
そんなもの使わなくたってどうにかなりそう、と弥子が言うとちょっとむっとしたように傘を差し出す。
「貴様のはボロボロだろ」
「あ、ありがと」
ザーザーザーザー
雨の音に、自分の言葉がかき消されているかもしれない、と弥子は思ったが、そのまま二人は事務所へ向かった。