小説U
□計算用紙が足りません
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なんなんだこの光景は
一言で言えば実に奇妙な光景がそこにはあった
『計算用紙が足りません』
事務所
そこにいるのはネウロと弥子以外に
笹塚
吾代
ヒグチ
という、なかなかそろわないような面々なのだ
偶然に偶然が重なり、ほぼ同じタイミングで会ってしまったのだ
「はい、コーヒーですよー」
弥子は特に何を思うわけでもなく、三人にコーヒーをつぐ
もちろん自分の分も忘れずに
本当ならあかねに紅茶のブレンドを頼みたい弥子だったが、そうもいくまい
「ん、サンキュ」
「笹塚さんは砂糖もミルクもいらないんですよね?」
「へえ、覚えてくれてたんだ?」
「ふふ、それくらい覚えちゃいますよ〜」
二人をまるで新婚さんのような穏やかな空気が包む。それが気に食わないのは残りの男達だ
「おい探偵、俺がコーヒーっつうガラかよ。ビールもってこい」
「そんなの事務所にあるわけないじゃないですか!」
吾代の無茶な要求に弥子は即切り返す。
「ああ?お前飲みっぷりいいからてっきりあると思ったんだよ。この間だって…」
「ぬわあぁぁ!!」
吾代からしてみればただ単に弥子とのエピソードを自慢したいという子供のような心理に従っただけなのだが、弥子からすれば迷惑な話だ。
自分がアルコールを飲んでいる話など、刑事がいる前でされたらたまったものではない。
「え?飲んでんの?」
案の定笹塚が反応する
「え?そ、そんなまさか!飲むわけないじゃないですか!」
弥子は必死に手をぶんぶん振り否定する。そんな弥子を見てヒグチは声を出して笑った。
「ははっ、やっぱお前おもしろいね〜桂木」
「それはほめ言葉なんですか?」
「うん、ほめてるつもりだけど」
いつに間にやら会話の主導権がヒグチに移動していて、それが気に食わないとばかりに男達がにらむ
「先生」
今までもくもくと作業をしていたネウロが、初めて口を開いた
「何?」
「僕にもコーヒーを入れてくださいませんか?」
「へ?だってあんた飲めないんじゃ」
「いやあ、あまりにおいしそうに皆さんが飲まれるので僕も飲んでみたくなったんですよ」
裏のありそうな笑顔でそう言うネウロに反論のない弥子は、キッチンへと向かった