小説U
□天秤は釣り合わないけれど
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「我輩と貴様の一番大きな違いはなんだと思う?」
穏やかな日差しが差し込む昼下がりの事務所での、突然のネウロからの質問
弥子はぽかんとしながらも、必死に思案をめぐらせた
『天秤は釣り合わないけれど』
「うーん…なんだろ、色々あるけど」
「まあそうだろうな、我輩は貴様と違い様々な能力を持ち、貴様ではありえないほどの美しさと色気をかねそろえているからな。悩むのも無理はあるまい」
「…うん、なんかいっそすがすがしいほどの言葉責めだよね」
ため息をつく弥子だったが、内心気が気でない
一番の「違い」を口にしてしまうと、もう全てが終わるような気がしてしまうからだった
「ふむ、まあ率直に言うとだな」
ネウロは目を通していた書類を置き、弥子をまっすぐに見て言った
「我輩は貴様を愛せないということだ」
弥子はたいして表情を変えずに、自分の心の中だけで言葉を繰り返す
私は、ネウロを好き
でも
それだけじゃない
あんただって
私に気持ちがあること
隠せてないくせに
弥子はいつもどおり、笑いもしない表情で言った
「うん、別に私もネウロ愛してないし」
帰り道
弥子は泣いた
言われたことと、言ってしまったことを後悔して、子供のように声をあげ、泣きながら帰った
でも、明日は普通に事務所に行こうと決めていた
そうでもしないと
ネウロのそばにいることができないからだ