小説U
□うそつき
1ページ/4ページ
相思相愛とか
二人の愛は永遠とか
そんな言葉が安っぽく聞こえる
まあその場の言葉だけでしか愛ってやつを信じられないのかな、人間って
そんな少しシリアスチックなことを考えながら、俺は今日も本庁でパソコンに向かっている
『うそつき』
寒い。署にいる人数が少ないから、と省エネを提案してきた向かいの机の刑事のせいで、暖房の温度を下げて何台か切ってしまったのが原因だ。寒い。指がかじかんだらキーボード打ちにくくなるじゃん。
「ねー、設定温度あげるかもっとつけるかしよーよ。俺寒くて死にそうなんだけど」
「我慢しろよヒグチ、若いんだから平気だろ?」
なんでここで若さが関係あるのかどうかはわからない。こんなんじゃ作業効率落ちて残業しちゃうかもしれない。ったく、なんでこんなときに情報課で風邪が大流行するんだろ。全ての仕事が俺に回ってきちゃうじゃん。残業は覚悟してたとはいえ、こんなんじゃ何時になるかわからない。
「やっぱり暖房つけよーよ」
「我慢しろ、あと2時間で仕事終わりだろ?」
だから俺多分残業なんだって
そう言いたかったけどもうあきらめた。こうなったらみんなが帰った後ぬくぬくしながら仕事をするのも悪くないかもしれない。どーせ家に帰ってもパソコンと向かい合うしね。
そうと決めたらもう急ぐ必要もない。なんか飲み物でも買うかな、と思ってロビーに出たら
予想外の顔がそこにあった
「桂木?」
「あっ、ヒグチさん!」
笹塚さんと筑紫さんと話していたらしい、桂木がいた。
まあ自然と足はそこへ向かう。
「よっ、桂木。外寒い?」
「そうなんですよ、思わずたこ焼き買っちゃいました」
それは寒くなくても変わらないんじゃない?という男3人の妙な意思の合致を感じながら、もっとこの場にいたいという気持ちと、仕事に戻らないと笛吹さんが怒鳴りにくるかもしれないという気持ちが混ざり合う中、桂木が話を続けた。
「笹塚さん、これこの間の書類です」
「あ、そういや頼んでたな」
「はい、遅くなってごめんなさい」
「自分から笛吹さんには言っておきますよ」
ただの女子高生、なんだよな。でもこういうところを見るとなんつーか、やっぱり慣れない。
まあ別にいいんだけど、かわいいし。
「じゃあ俺仕事行くから、じゃーね桂木」
「え?」
「は?」
なになに、そんなに俺にいてほしいわけ?それはそれで嬉しくてにやけてしまいそうなんだけど、どうやら様子が違う?
「仕事なんですか?」
「うん」
「もう5時ですよ?」
「残業になりそう。マージで今日仕事多いんだよ」
「…」
「桂木?」
「…」
「…?」
「…そうなんですか」
すると桂木は俺以外の2人に挨拶をして、出口に向かって歩いていった。
え、何?俺嫌われたの?