小説(恋華夢なし)
□雷パニック!
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ドッカン
突然の爆音と揺れに,部屋で雑務をしていた土方は顔をしかめた。
「この爆音は……。また、山南さんだな。あの人には困ったものだ……」
その土方の言葉通りに山南の部屋からは煙がもくもくとでていて、またもや、偶然通りかかった永倉と原田が爆風に巻き込まれ、庭先に吹っ飛ばされていた。
「だ〜っ!! またかよ〜」
「サンナンさん……勘弁してくれ!」
部屋からでてきた山南は倒れている二人に目をやると、謝った。
「すまない、永倉君と原田君。また巻き込んでしまったね」
「今度は何の実験だよ!」
「また怪しい薬じゃねーだろうな」
ぷすぷすと少し焦げ付いた二人は頭をかきかき起き上がると、山南を警戒して見つめた。
「やだなぁ〜、もう変な薬はつくらないよ。今度のはすごいよ! 雷の力を利用する装置をつくっているんだね。でも、これがなかなか難しくて……。うまくいったら、二人に見せてあげるよ」
「雷?」
「いや、俺は遠慮しとくぜ。新八にみせてやってくれ!」
「左之! てめェ〜、何いってやがんだ。俺も間に合ってるんで……」
首を真横にぶんぶん振りながら、じりじりとあとずさった永倉と原田は、笑みを浮かべるとその場を走り去っていった。
「う〜ん、あの二人には警戒されているね。お詫びに何かいいものを発明してあげなくては……」
真剣につぶやいている山南の考えを知る由もない永倉と原田は、後でものすごいことに巻き込まれるとは思いもしないでいた。
それが、新選組を巻き込む大事件になるとは……。
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