光馨小説

□切ない5題
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僕の願いは光の幸せだけであると思っていた。
それなのに、僕は愚かな願いを灯してしまった。
光の笑顔は僕だけに向けられていればいいのに、
光の声は僕だけに語りかけてくれればいいのに、と。

あぁ、なんて卑しいのだろう。

僕は光の幸せを願って光の笑顔を守ると決めたのではなかったか。
それなのに何故、恋なんてしてしまったのだろう。
そして何故、それに気づいてしまったのだろう。

他人から見れば異常であろう依存も執着も、全ては光を愛してしまっていたからだった。
ずっと傍にいて守るなんて狡いことを考えながら、僕は光の幸せな未来を遮っていたのだ。
あんなに輝いていた光の笑顔が最近少し陰って見えたのは、それを「守りきれなかった」などと悔やみ懺悔していた僕自身のせいだったのだ。


ごめんね、光。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
ずっと気がつくことができなくてごめんなさい。

光には幸せになって欲しいから、いつでも笑っていてほしいから
この雨が上がるまで、あと少しだけ
あと少しだけ傍にいさせて。



きみの笑顔、きみの声


今だけは僕だけに向けられているのだと夢を見させて。

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