光馨小説

□切ない5題
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いつまでも光とふたりだけの世界にいたかった。
その笑顔、その声、その温もりの傍にいつもいたかった。いてほしかった。
いつまでも手を繋いで笑いあっていたかった。
けれど光は抜け出していってしまい、そしてそれは幸せのためには必要なことだった。

僕は光の幸せを望む。願っている。
いつまでもふたりで、なんて願うのは間違っているのだ。


光は優しいから、僕が邪魔だと気がついても強く突き放すことなどしないだろう。
きっとただ苦しそうに笑うだけだろう。
僕はそんな光の顔は見たくない。(皮肉なことにその原因は僕だが)
光を守る、幸せを願う、それが僕の使命だ。
ならば僕から終わりにしなければならないのだ。
忌々しい僕という鎖から解き放ってあげなければならないのだ。
光を、愛しているから。

あぁ、涙が零れてくる。
苦しくて苦しくて仕方ない。
辛くて辛くて仕方ない。
部屋が真っ暗で本当によかったと心から思った。
さぁ、涙を拭いて。


「ねぇ光。僕ずっと前から、光のこと大っ嫌いだったんだよね」


あれほど決心していたはずなのに声は少し震えていて、こんなときまで弱虫な自分自身に嫌悪する。
そして一瞬月明かりがさして見えた光は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。



大好きだよ。言えやしないけれど


何故、そんな顔をするの

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