光馨小説

□それは禁断の。5題
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自分の気持ちは禁忌なのだ。
自覚していても伝えてはいけないのだ。
それが苦しくて切なくて、兄弟ましてや双子になんて生まれなければ、とすら思った。
こんなに近くにいるのに、近くにいるからこそ届けられない想い。
あぁ、なんて残酷なのだろう。


ある日を境に、馨が距離を取り始めていると感じた。
以前ならば僕のすぐ隣を歩いていたのに、斜め後ろを歩くようになった。
どこへ行くにも優しい笑顔で一緒にきてくれていたのに、一瞬だけれど少し困ったような表情をするようになった。

何故、なんて考えなくてもわかる。
馨は頭の回転がはやく他人によく気がつくから、きっと僕の感情に気がついてしまったのだ。


困ったような泣き出しそうな馨の笑顔も綺麗だ(そう思ってしまう僕はなんて愚かなのだろう)けれど、今にも儚く消えてしまいそうで胸が苦しくなる。
馨はこんな僕の傍にいてはいけないんだと思っていながらも、絶対に離したくないという気持ちも強くなっていく。

僕は独占欲の強い方だとは思っていたが、まさかこんなにもだったなんて。
そしてそれが大切な馨を傷つけ悩ませていたなんて。

大好きな優しい笑顔は、もう僕には向けてくれないのだろうか。



ごめん。好きになってごめん


頼むからもう一度だけ、僕に笑いかけてくれないか。

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