光馨小説

□あの日、君の笑顔に恋をした。
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「――っていうことあったよね」

自室のベッドの上、ふたりで寝転がりながら(馨は本を読みたそうにしていたけど)、授業中に見た虹や懐かしい思い出の話をした。

「さあ…ちょっと昔すぎるよ」

言いながら、ごろん、と背中を向けてしまう馨。名前を読んでみても、眠たくなったのかと聞いてみても「うーん」としか答えなくなってしまった。
正直もっとノってきてくれると思っていたから少し残念。だって、そうやって一緒に虹を眺めた僕らが本当に恋人になれたんだから!

でも、不自然に素っ気ない態度の馨に、僕はある仮説を思いついた。


もしかしたら、僕より遥かにたくさんの本を読んでいた馨は、きっとあの時からリョウオモイの意味を知っていたんじゃないだろうか。
そして、全てを知っていてあの言葉を言っていたのだとしたら。


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「馨、待たせてごめん」

ぎゅっと後ろから抱きしめると、馨の体はぴくりと跳ねた。いつもより少し高くなった体温を感じる。

「……待たせすぎ、でしょ」


搾り出された声と縮こまる体が愛おしすぎて、好きな人が己の腕の中にいるという幸せを精一杯噛みしめた。




あの日、君の笑顔に恋をした。
それが全ての始まりだった。

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