光馨小説
□庶民双子
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庶民な双子
おやすみ、と電気を消して数分後、馨はベッドが軋む音と共に布団の中の違和感に気づいた。
「…なにやってんの」
もぞもぞと背中に張り付く温もりに声をかけると、いつになく弱々しくきゅっとパジャマを握られた。「あれ?」なんて思っているうちに、首筋に柔らかい髪の感触。
「かおる、一緒に寝よ」
光の声に珍しく甘えが含まれているものだから、なんとなくくすぐったい。
「どうしたの?」
「寒いからさ」
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確かにこの所朝晩ととても冷える。だが馨は冷えた布団が自分の体温で温まっていくところや、朝方ぬくぬくと布団にくるまって微睡むことが案外好きであった。
ついでに言うならば、光の体温は低めな体温の馨には少々暑苦しいときもある。
「えぇー」
「いいじゃんか!馨をだっこして寝たいんだよ!」
渋っていたせいかしおらしい態度や甘えた声は急変し、普段通りの光に戻ってしまった。けれどストレートな言葉は馨の心臓をドキリと跳ねさせる。と同時に顔が火照ってくるのが自分でもわかった。
「もうっ今日だけだからね!」
「やった!」
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嬉しそうにぎゅうぎゅうと抱きしめられると、ドキドキ体温が上昇していく。心地よい暖かさと重みが幸せの比率のようだ。
(…湯たんぽ代わりもたまにはいいかな)
『かおるー、好きだよ』
『うるさい馬鹿さっさと寝ろ』
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