光馨小説
□ドロップ
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カラ、コロ
転がる色とりどりの中から、みんなで好きな色を選んで口に含む。
ハルヒがくれたドロップは、さすが庶民キャンディ。
ピーチだのメロンだのパインだの書いてあるけど、全然そんな味はしなくて
薬品みたいな安っぽい味がする。
殿は最近見た映画の影響らしく、涙を流しながら舐めているけど。
(でも、やっぱり果物の味はしないって)
「「あんまり美味しくないネ」」
口の中に広がる、ピーチには程遠い変な甘ったるさ。
庶民がこれをピーチの味だと勘違いしているなら、それはそれは可哀想な話だね。
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でも美味しくはないけど、別に悪くもない感じ。
科学的な甘さには毒がありそうだけれど、
もっと中毒性のある甘さを僕は知っている。
「光、何味舐めてるの?」
「すっごく甘いやつ」
「え、何?」
興味津々な顔を向けてくる馨があまりに可愛くて
思わず、ドロップを口移し。
そして
舌を動かして、交換完了。
と同時に、
パーン、と乾いた音が響いた。
「〜っ!光、のバカ!」
僕を睨む馨の頬は桃色。
馨に叩かれた僕の頬はヒリヒリ。
口の中は相変わらず甘ったるいけど、
ハッカ味のドロップで少しだけ舌がヒリヒリするもんだから
なんだか笑ってしまった。
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