光馨小説

□シロップ漬けの果実のような
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迎えた朝の天気は雨。
いつもならば少し憂鬱な気分になってしまうのだが、気だるげな灰色の空と鳴り止まない雨音が今日は何故か心地良い。
こんな休日は美味しい紅茶を飲みながら読書をして過ごそう。そういえばまだ読んでいない本があったんだった。
レースのカーテン越しに窓の外を眺めながら、馨は一日の予定を大まかに立てる。
まだベッドに横になっているのは眠る光に抱きつかれているからで、その姿はさしずめ抱き枕のようだ。

眠るときは大概馨が光の胸に頭を抱えられるような体勢なのだが(これが苦しくて少し寝づらい!)、今日は光が馨の胸に顔を埋め背中を抱きしめながら眠っている。
故にいつも光より先に目が覚める馨は寝顔を眺めることができず、なんとなく持て余した視線を窓の外に向けていた。
早く起きないかな、とは思うが、気持ち良さそうな寝息の相手を起こすのはなんだか申し訳なくてされるがまま。

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