光馨小説

□サイレント・ハロウィン
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――南瓜のランタンに火を灯して、思い出すのは去年のハロウィン。



3年前までは、ふたりきりでお菓子を交換しあったね。
去年はハルヒも一緒にランタン作って…それが超不細工で爆笑したよね。
ふたりで魔女の悪戯仕掛けたり、すごく楽しかった。


だからひとりで迎えた今年のハロウィンが、泣きたいくらいさみしく感じるよ。
毎年のパーティーもあったしホスト部のみんながいたから、本当にひとりで迎えたわけじゃないけどさ…光がいないと、結局僕はどこにいても独りぼっちなんだ。

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ねぇ、光。
どうしていなくなっちゃったの?
独りぼっちじゃ悪戯する気にならないし、ご馳走もお菓子も美味しくない欲しくない。



――南瓜の影が歪んで揺れている。それが自分の涙のせいだなんてわかってる。



いつも光はさ、お菓子をあげても『悪戯』って笑いながら、見える所にキスマークつけたりしたよね。
僕はやめてよって言ってたけど、本当はすごく嬉しかったんだよ。
だからね、こんなハロウィンの夜だからこそ、悪戯好きの光がいつもの笑顔で戻ってきてくれないかなって、そう思った。
ほら見てよ、僕はお菓子を用意しなかったんだよ?


「悪戯、してってよ…」




今年もまた聞きたかった。
来年も再来年も聞きたかった。
ずっとずっと笑いあえるって信じてた。



『トリック・オア・トリート』




――ひとり呟いた言葉は、暗い夜空に吸い込まれていった。


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