光馨小説

□桜色の誘惑
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いつも僕が「キスして!」って言っても馨は、無視するか殴ってくるか(余程機嫌がいい時限定で)ほんと軽く一瞬触れてくるだけ。
そんな照れ屋さんなところも可愛くて大好きなんだけど、やっぱり、ちょっと寂しいなと思う僕もいて。あーあ、馨からキスしてもらいたいな。





「ねぇ光、珍しいジュース見つけたんだけど飲む?」
「なになに?飲むー!」

馨に差し出されたグラス(僕が選んだプレゼントのペアグラス!)には、綺麗な薄いピンク色が揺れている。何だろ、ベリー系?

「桜のジュースだって」
「ありがと!」

桜ってジュースにできるんだ、知らなかった!結構珍しいから受け取って少し眺めて、桜の匂いもするのかな〜なんて鼻を寄せてみた。

「え?これ…」

香ってきたのはワインのような酒気。これってジュースじゃなくてさ、

「馨、これワインじゃない?」
「へ?」

馨のグラスの中身は半分程減っている。僕を見つめる瞳は少し潤んでいて、頬はほんのり桜色、薄く開かれた唇はワインで濡れなんとも扇情的。…胸がドクンと強く脈打った。

「かお…」
.
馨はやけにゆっくりとした動作でグラスをサイドテーブルに置いた。そしてくらくら目を奪われている僕に、きゅ、と抱きついてきて。

「…っ!…は、」
「んぅ……」

いきなりディープキス。

え、ちょ、えぇぇえぇ!?嬉しい!!嬉しすぎる!!けど…まさか、馨から!?絶対酔ってるよね!?

「ぷはっ、馨…どうしたの!?」

唇が離れた瞬間飛び出した台詞。我ながらなんて不躾なんだ、と思う。
でも頭が混乱しているんだ。だって、酔ってるとはいえあの究極な照れ屋の馨から、でぃ、でぃでぃ、ディープキスなんて!!

「ね、光ぅ…もっとぉ…」

抱きつかれたまま至近距離で、トロンとした瞳に見つめられる。動けない。やばい…かなりクる、なんて思った矢先に再び塞がれた唇。
頭の中の何かが弾ける音が合図。グラスを置き開いた両手を背中に回して、一生懸命に舌を絡めてくる馨の熱い身体を抱きしめる。そして少したどたどしいキスからリードを奪って、ああ僕の理性は崩壊してしまいまし、た。



.
そのままふたりベッドに倒れ込んで。




桜色の誘惑







『あら?馨、お母さんの桜のワイン知らない?』
『あっごめんなさい、昨日間違って割っちゃった…』

(……え!?)

.

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