光馨小説

□Je veux le protger.
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「う〜…」

目が覚めると、枕に顔を埋めて唸っている光がいた。
(具合悪いのかな…?)
心配になり身体に触れると、肌は普段より熱くしっとりと濡れている。

「光、医者呼ぶからね?」
「や…、いい、大丈夫…」
「いいわけないでしょ」

声をかけると枕からちらりと視線を向けてくれ、火照った顔と熱っぽい目、汗で額に張り付く前髪が見えた。相当具合が悪いのだと予想できる。僕は内線を取り、大至急で医者を呼んだ。




診断は普通の季節風邪、薬を飲んで2,3日療養すればすぐに治るとのこと。光が問診に「昨日の夜から少し調子が悪くて、夜中頭痛で目が覚めた」と答えていた。枕に顔を埋めていたのは、きっと僕を起こさないようにと気を遣ってくれていたんだろう。


「もう、どうして起こしてくれなかったの?」
.
気づけなかった自分が悔しくて悲しい。だから光にこんな言葉を言うのは間違っていると思うけれど…。でも、辛いときは頼って欲しかった。

「だって……、カッコ悪いじゃんか」
「…バカじゃない?」
「えぇー!馨ひどい!」
「あのね、光」

僕にだって心配させてよ頼ってよ。具合が悪いときくらいかっこつけなくていいんだよ。そんなのじゃ嫌いになったり幻滅したりしないから。
ゆっくりと髪を撫でながら目を見て、気持ちを告げる。光はぽかんと口を開けて僕の言葉を聞いていたけれど…もぞもぞと掛け布団を頭まで被ると、弱々しく手を握ってきた。

「…じゃあ、そばにいて」
「うん」
「…馨が看病して」
「うん」

胸に広がる愛しさ。熱い手を強く握り返す僕の頬はきっと、光みたいに緩んでいるんだろうな。不謹慎だけど、弱っている恋人がこんなにも可愛らしいなんて。


「なんか…守ってあげたくなるなあ」

思わず漏れてしまった声。
すると凄い勢いで布団が捲られ、

「バッカ、僕がお前を守るんだよ!!……いっ、てぇ…!」
.
自分の大声が頭に響いた光は、涙目でぱたりと倒れ込んだ。こんなバカなところもやっぱり愛しくて、僕の口元は小さな弧を描く。


「光、」

好きだよ、の言葉は君の吸い込む空気に溶け込ませた。






Je veux le protger.
(守りたい。)

.

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