dream2
□一生一緒にいようって誓ったの
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人混みの多さに辟易して、はぐれた相手を探していると知らぬ男性に声をかけられた。
どうやらお茶に誘っているらしい。
「喉、乾いてないので。」と断ったのに、諦めてくれない。
今、すごい焦って彼を探しているから、目の前の男性の口説き文句が聞こえてなかった。
せっかくのデートで迷子になったと怒られちゃうだろうし、バカにされる。
見知らぬ男性に「もう、ついてこないで。」と言おうとしたら男性と私の間に人が割って入って来た。
「……ぁ…スモーカー……。」
私を見つけてくれたことにホッとする。助けに来てくれた。
体が大きいから目立つのに、その彼がこの人混みから小さな私を見つけてくれたことが言葉で言い表せないほど嬉しかった。
離れていたのは数分なのに、まるで久しぶりに会えたかのように私、喜んでる。
「ガキじゃねぇんだからよ。はぐれて、迷子になってんな。」
急に現れた大柄なスモーカーに、話しかけてきた男性は驚いていた。
私から視線を男性へと移す。
「悪いが、兄ちゃん。こいつ、もらっていくぞ。」
言葉は優しいけど、目付きが恐ろしい。
慌てて立ち去る男性とスモーカーを見てつい
笑う。
「おい、笑うな。」
「スモーカー、はぐれないでよ。」
バカにされる前に、迷子になった責任をスモーカーになすりつければ、頭をがっちり掴まれた。
……あぁ、私の頭をすっぽり包んでしまう大きな手が、私に触れている。
頭を掴まれているせいで、顔を見上げることは出来ないけど目の前にガタイのいい腹筋。
……すべて、私のものにしてしまえたら……。
「てめ……。俺が見つけなかったら、あの男と何するつもりだった?見つけてもらえたことに、感謝しろ。
それに、はぐれたのはお前だろ。」
怒りを通り越して呆れた声。その声さえ、鼓膜を揺らすには心地のいい、むしろ心地よすぎて鳥肌がたってしまいそう。
「妬いてるの?」
「バカ。」
大きな手が頭から離れて、寂しさを感じるけどすぐに右手をその大きな手で掴まれた。
「……。」
「……。」
穏やかだけど、鋭い目が私を見下ろしている。
私は繋がれた手とスモーカーの顔を交互に見比べ、そして笑う。
「ふん。だらしねぇ顔。」
優しく引っ張られて歩きだした。
歩幅もちゃんと揃えてゆっくり、
ゆっくり歩いて行く。
「そうね。さっきの男性に、今の顔は見せれないし、私にこんな顔をさせることは、スモーカーしか出来ないことよ。」
だらしないって言うのも、あなただけ。
「じゃぁ、はぐれんな。」
「最初から、手繋いでくれたらよかったのに。」
私は繋がれた手をそのまま自分の腰に導いた。手を繋いでいた時より距離が縮まり密着する。
すぐそばに、あの腹筋と熱い肌。
私もスモーカーの腰に腕をまわすが、届かない。
だから背骨をなぞるように撫でた。
……あぁ、くらくらする。
「手を繋ぐぐれぇじゃ、お前、満足しねぇだろ?」
スモーカーに酔ってくらくらしていたら、ぐいっと腰を引き付けられ、背骨をなぞっていた手さえもつかまれる。
耳元で、あの低い声。
……私、酔ってるんじゃない。狂ってるんだ。
「やらしい手つきで触れてきやがる。だから、手を繋いでやらなかったのに……仕方ねぇなぁ。」
見上げたら、捕らえられて逃げられなくなるのに、私は見上げてしまう。
妖しい光へと変わった、鋭い目。
悪人みたく意地悪い笑みを浮かべた口許。
そこでキスを奪われないのがまた
物足りない。
そうやって、私を焦らして離れられなくする。
すべて、私のものになるのかな?
「家に帰るぞ。そして……お前を、食い尽くしてやるよ。他の野郎なんか、手が出せねぇくれぇな。」
愛しい狂気。
私のものにはならないんだと知った。
私がすでに彼のものなのだから。
(妬くなんて言葉じゃ表せない程の依存)