dream

□最低な売り言葉、最高な買い言葉
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「もういい、もういい!マルコなんて大っ嫌い!」
喧嘩の理由なんてとっくに忘れた。
きっとたいした理由じゃなかったんだと思う。
それでも、あたしがこんな怒っているのはマルコの態度のせいで。
いつも冷静で、あたしがどれだけ感情的になっても顔色一つ変えずに上手く丸め込もうとする。
そうされるとどうも自分がちっぽけに思え、よけいに腹が立つ。
「マルコの恋人なんてやってらんない!もうやめる!」
つい感情的になりすぎ勢いに任せて言ってしまった言葉が部屋に響く。
しまった、と思ったときにはすでに時は遅く、マルコは今までにないほど無表情にあたしを見つめた。
「そうかよい、それは残念だい」
そう言って席を立つ。
違う、そんなつもりで言ったんじゃないの、そう呼び止めようにも声が喉につかえて音に鳴らない。
本気で嫌われた、そう思い俯くと目頭が熱くなってきた。
このまま泣いちゃおう、そう思ったその時、温かい体温が優しく身体を包んだ。
「マルコ・・・」
「お前がやめるって言うんならしょうがないよい」
「あ、あのねっ・・・」
違うの、ごめんなさい、そう言葉を紡ごうとした唇はそっと柔らかい唇に塞がれる。
普段のマルコからは想像し難い猛々しい接吻。
やっと唇を開放した後、マルコは意地悪な笑みを浮かべそっと耳元で囁いた。
「俺はまた、一からお前を口説かなきゃなんないよい」

最低の売り言葉、最高の買い言葉
(結局今日も、あなたに上手く丸め込まれるの)

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