dream

□散らかった部屋
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この船には物がすごく散らかっている部屋がある。使わなくなったものとか、ルフィが壊して使えなくなったものなんかが置いてある、いわゆる物置部屋。

棚に収まりきらないぐらい物が溢れかえったそこを片付けることになったのだけれど、誰も自ら進んでやりたがらない。

厳正なあみだくじの結果、運悪く「当たり」を引いてしまったわたしとルフィが片付け役になってしまったのだった。


「うう、こんなのふたりじゃ無理だよー…」
「まあ、だいじょーぶだって」


そう言って能天気にルフィがわらった。だめだルフィはあてにできない、そう思ったわたしはしぶしぶごみ袋片手に不要品の回収を始める。


山積みになった木片やら壊れた生活用品のなかに、ふと見覚えのあるガラスの花瓶を見つけた。手に取ろうとしたら花瓶はわたしの手から滑り落ちてしまった。


「あ、!」


がしゃん、と音を立てて割れた花瓶を急いで拾おうとする。慌てて破片を摘むと左手の指を切ってしまった。


「うわ…切っちゃった」


慌てすぎた、何やってるんだろう。指先からは真っ赤な血が滴り落ちていく。


ふと顔を上げれば心配半分真剣半分の表情をしたルフィが立っていて、いきなりわたしの指をくわえた。


「ちょ、ルフィ…!」
「ふ、いへえか?」


いてえか?と眉を下げるルフィにわたしはなんとも言えなかった。恥ずかしいし、なんていうか、くすぐったいようなしびれるような変な感覚。


「あ、うう…ルフィ、」
「ん、これでよし!」


何がよしなのかいまいち分からなかったけれど、指から流れ出る血は止まっていた。

とりあえずありがとうとお礼を言って、今度は慎重にガラスの破片を拾い上げた。まだとなりで立ったままのルフィを見上げれば、物足りなさそうな目でわたしを見つめるルフィがいた。


「な、に?」
「ん…なんかちゅーしたくなった」


いきなりのことに驚いてわたしはポカンと口を開いたままになった。


「ちょ、っとルフィ」
「おまえ、かわいい」


わたしよりもすこし高い温度のルフィの手が、わたしの頬に添えられる。じい、と見つめられて思わず目を逸らした。


「ちゃんと目、みろよ」


それが魔法の言葉みたいに頭のなかで響いて、ルフィのまるい目を見た。その瞬間かるいリップ音が小さく鳴って、わたしはまた目を逸らした。


「は、はずかしい…」
「へへへ、おまえ真っ赤だな」
「…ばか、」


恥ずかしくて恥ずかしくて顔から火が出そうだ。このあまいキスもがらくたとの中に隠してしまおうか。




散らかった部屋

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