dream

□とりあえず舐めてみた
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「ばっかじゃねーの」
「るせェ!!!」
「事実だよ事実」
「てんめ……!?」
「ゾロ!動いちゃダメだ!!」


わたしとチョッパーがサニー号で留守番をしていたら先にゾロが帰ってきた。……のは良いけど、何故か体中噛み跡だらけで帰ってきた。

何故だ、ゾロよ。

そしてわたしはチョッパーと一緒に無数の噛み跡の治療をしている。


「だから何でだ、オイ」
「おれが知るかっ!!」
「何でそんな噛まれてんの!?あんた強いんじゃないの!!?」
「ンなこと言ったって斬っても斬っても増えるし向かってくんだよ!!休む暇なんざねえ!」
「お前は何をしてきたんじゃアホ!!!」


傷に薬を塗りながら言い合いをしていたらチョッパーが大きくなってゾロを殴った。
取り敢えず、原因究明の為に傷をまじまじを見れば、何かはっきりしてくる。何たってわたしは生物学者であり、自然科学者であるのだ。生物の生態なら任せろ。


「歯型と傷の深さからトリックマウスと見た!ゾロの斬っても増える、向かってくるもトリックマウスの生態で間違いなし!」
「なあなあ、トリックマウスって何だ?」


得意げに説明してもチョッパーとゾロじゃわからないので、わたしはスケッチブックを取り出して説明を始める。
ゾロの手当は後回し。


「トリックマウスは兎に角死にぞこないです。細胞の形成が異常に早く、生命力も半端ないんですぐに復活します。しかも30%の細胞の塊があれば新たな生命が誕生します。性別は元のトリックマウスを引き継ぐよ」
「性別うんぬんはどうでもいいだろ」
「傷を診る限り、攻撃力は大きいみたいだけど、毒はないな」


トリックマウスについて雑学やら織り交ぜて説明したらゾロに早く手当手伝えと顎で指図された。
ムカついたんでわざと包帯で腕を力いっぱい絞める。鬱血するくらい、強く。


「ギャー!何してんだ!?そんな強く締めたら苦しくなるだろ!!」
「人生にゃ苦しみも必要さ」
「ざけんな」
「あでっ!」


当たり前だがチョッパーに注意され、ゾロには頭にチョップされる。冗談だよ、と今更言うが嘘つけとゾロに一蹴された。

その後も騒がしくしながら無数の傷の手当をし、チョッパーが新しい薬を持ってくると言って甲板から居なくなった。だから今はわたしとゾロだけだ。


「しかしまあ、何をしたらこうなるまで襲われるわけ?」
「心当たりがねえ」
「ありゃりゃ」


他愛もない会話を続けているうちにやっぱり暇になる。やることなくてその場に寝転んだらおい、とゾロに声をかけられた。


「なに?」
「首に傷なんかあったか?」
「あー、知らない」


言われて今気付く。手を首に持っていけばぬるり、と液体が指先に纏わり付いた。
痛くもないからあらら、なんて気の抜けた声をあげたら目の前にゾロの顔が近付いていた。何故だと思うと同時に生温い感覚が首に走った。


「ひゃあっ!!?」
「っ!?耳元で叫ぶな!!」


生温い感覚の正体はゾロの舌で、どうやら首の傷を舐めたらしい。
気持ち悪いというか、何とも言えない悪寒が背中を走ったのでぐぐっとゾロの顎を押す。

あー気持ち悪い。


「いきなり何してんだボケェ!!?」
「取り敢えず傷つくったら舐めときゃ治るっつーだろ。ソレだソレ」
「自分が傷つくった時にやれ!!!」
「っでえ!!?」


何故ゾロがこのタイミングで舐めときゃ治る節をわたしに使ったのかなんて、知る気はない。

つか、むしろいらついたからもう一発ブン殴った。




ただ、傷を舐める前にゾロの顔が獲物を狙う獣に見えたのは、きっとわたしの気の所為だと思いたい。





取り敢えず舐めてみた

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