dream

□とりあえず抱き締めてみた
1ページ/1ページ

あたしには好きな人がいる。

大きくて、強くて、かっこよくて。

ちょっと年は離れてるけど、あたしはそんなの気にしてない。

だって、好きなものは好きなんだもん。


でもあの人はそうじゃないらしい。

あたしがいくら好きですって言っても、軽く流される。

本気ですって言ってみても、若気の至りですまされる。


この時初めて、年の差を恨む。


どうしたら伝わるんだろう、この気持ちは。

仕事そっちのけで考えてた。

いっぱいいっぱい考えて(たぶん、仕事しているよりも真剣に)、あたしの頭はパンクしそうになった。


そんな時、ガープ中将に言われたんだ。


お前はお前らしく、あたってあたって。

それでもだめなら諦めろ。


なんか、勇気が出た。

そうだよ。

悔いの残らないくらいあたってみよう。

これでだめならしょうがないってくらい、あたって砕けてしまおう。


考えたら即行動、のあたしは、全速力であの人の元に向かった。




















『クザン大将!』



扉が吹き飛ぶんじゃないかってくらいの勢いで、あたしは大将の部屋に飛び込んだ。

もう慣れっこなのか、大将は驚いてさえいなかったけど。



「また来たの?」


『何度だって来ますよ』



だって、大将のことが好きだから。


口には出さなかったけど、きっと伝わってるこの気持ち。

今日こそ受け止めて欲しい。



『大将、あたし、決めました』



さっき自分に誓ったことを、もう一度頭の中で繰り返す。

あたって砕けろ、あたって砕けろ。

正直、砕けたくはないけど。



『あたし、大将のことが好きです』


「あー、はいはい。ありがとね」


『…でも、しつこいのは大将も嫌いだと思うから、もう、やめにします』



そのかわり。


あたしはいすに腰掛ける大将の上に飛び乗り、大きな躰をぎゅーっと抱きしめた。

珍しく驚いている大将は、ぴくりとも動かなかった。



『あたし、本気なんですから。そろそろわかってください』



厚い胸板に顔をすり付け、大将の熱を感じた。


今まで何度も好きだと言ってきたけど、こうして触れるのは初めてで。

正直、心臓はばくばくだった。



「…あー、その、なんだ」



これまた珍しく言葉を濁らせる大将。

あたしは密着したまま顔だけ上を向き、大将の顔を見ようとした。

ら、大きな手で視界を遮られた。



『た、大将?』


「…あんまり大人を挑発するもんじゃないよ」



あたしの顔を覆っていない方の大将の手が、あたしの背中に回る。

ぎゅっと、抱き寄せられた。



「まったく、こっちは抑えてたっつーのに」


『え?』


「おれもいい年だしね。色恋沙汰には臆病になんのよ」



やっと、視界が明るくなって。

初めてこんな近い距離で大将の顔を見た。



「後悔しない?」


『なにがですか?』


「おれを好きになっちゃったこと」



するわけないですよ。

と息巻いて答えれば、大将は笑って、あたしの頬に口づけてくれた。















ぎゅっと抱き締めてみる
(やっと、伝わった)






END
(2010.11.30.)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ