Dグレ 短編

□信じるこころ
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こんな気持ちだったのか。っていうのがまず思ったこと。



この世界に飛ばされて、わーアレンだー!リナリーだー!って喜んでたけど、自分にはイノセンスが使えなくて…
普通こういう時は最強の使い手とかじゃないのかよ!!って感じだったけど。




代わりに与えられてたのは膨大な知識。もちろんこの世界のこともだけど、主に化学、科学、物理、数学の面がすごく強くなったんだと思う。
おかげで始めっからこの黒の教団本部の科学班で働けることになったわけだけど…




「こんな気持ちだったのか…」


「ん?どうした?」




わたしの心のつぶやきは声に出てたらしい。
斜め前のデスクにいたリーバー班長が、机に積み上げられた膨大な資料の横からひょいと顔を出して肩眉を上げて尋ねてきた。




「あっ、いや…待つのってつらいなぁって、おもいまして」




そう。待つこと。
自分がなってみないと分からなかったことだった。科学班はもちろん、コムイ室長はいつもこんな気持ちだったのかとやっと理解した。




いつも謎だったのだ。彼ら(特にリーバーさんなんて余裕で五日とか寝てないときがある)はそんなに頑張るのか。



全て仲間のためだったのだ。



私達は世界を救うために、この黒の教団にいるけれどここで過ごして気づいたことは確かにここはホームなのだ。
ジェリーさんがいて、婦長さんがいて、ファインダーの方がいて、そして私たち科学班とコムイ室長がいて、そしてエクソシストのみんながいる。
みんなと話したり、笑ったり、泣いたり、怒ったりして気がついたこと。それはここのみんなは家族なのだと。




だから私達は家族のために頑張るのだと。





いつだったかリナリーが言っていたのを思い出した。
ここのみんなが私の世界なんだ、と。
確かにそうなんだと今なら私も思う。




「そうだな…こればっかりはどうしようも出来ないんだけどな。」



やるせないな、と言った感じで笑うリーバー班長。



「みんな無事に帰ってくるといいよね」




ジョニーがいつの間にか後ろにいて私の肩に両手をおいていた。
見上げると彼は不安そうに眉を下げて瞳を揺らしていた。




みんな不安なのだ。

エクソシストやファインダーの方はアクマのいるところに、危険なところに行かねばならない。生きて帰ってこれる保証なんてない。
昨日まであった笑顔が今日見れないかもしれないのだ。



「スーマン、帰ってきたらまたチェスやろうとか言うのかなー」



明るい声で話すジョニー。
スーマンが任務帰りすぐにジョニーのところにチェス盤をもってきているのを何度か見たことがある。ジョニー、チェス強いからついついスーマンが意地になってるみたい。



「リナリーが帰ってこないと室長も使いものにならんしな」


「そうですね。リナリーのいれてくれたコーヒーが飲みたいなぁ」




リーバーさんの言葉に私も笑って答える。
頭に彼女たちの笑顔を頭に浮かべながら。




「そういえばラビが名無しさんに会いたいさーってこの前の通信で叫んでたぞ」



「えぇ!ほんとですか?ラビくん相変わらずだなぁ」


「その後ろでアレンが僕も会いたいです、って言ってたらしいよ。タップが言ってた」


「わー、アレンくんまで」




思わずクスクスと笑ってしまう。
ったく、相変わらずだよなとこぼしながらもそんな『相変わらず』に安心するように優しい笑みを浮かべるリーバー班長とジョニー。



「はやく帰ってくるといいな」


「そうですね」



さっきほどの不安は消えたような気がする。胸にはなんだかあたたかな気持ちが広がっていた。
大丈夫、彼らは帰ってくる。







信じるこころ
(「帰ってきたらリナリーと買い物にでも行きたいなぁ」)
(「室長がついていくに決まってるからやめてくれ、仕事が進まなくなる」)
(「班長、笑えないッスそれ」)
(二人の顔が絶望的に…!!)

 

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