未来に向かう!俺の足!!
□未来に向かう!俺の足!!
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「えー、出席を取りたいんだが、明らかに二人…いないよな…」
先生の眉毛はぴくぴくと動いていた。
「紫水と立花はどこに行ったんだー!!」
その一方で、川岸の斜面の草原で一人寝ていた。
「ふぁー、朝の草原はいいよなぁ。寝るには最適」
俺はおもっくそ大きな欠伸をした。
「紫水〜」
明らかに俺の名前を呼んでいる奴がいた。欠伸をしたまま振り返ると、奴の姿は段々と大きく見えた。
「何だよ立花、お前もサボりかよ」
溜息を漏らすと、立花は斜面をスルスルとすべり、少し真面目な顔で言った。
「バーカ、お前と一緒にすんなよ。俺は遅刻」
威張ることかよ。どっちも一緒じゃん。
俺はムクッと起き上がり、ケツをはたいた。
そして立花を見下ろした。
「俺今からバイクで旅に出んから」
「おいおい、朝から高校生が勉強じゃなくバイクはないだろ」
「だって、今日行ったらあの不良女に殺されちゃうよ俺」
紫水は青ざめた顔であたふたしだした。
「だったら今日こそ行かないとあの柑咲に追いかけまわされんぞ」
「確かに。あの女は地獄の底までついてきかねない」
そう、俺らがビビってる相手、柑咲妙(かんざきたえ)は人の心を持たない鬼で、自分も不良なのに不良を嫌うという謎なお人。
「俺先に行こ」
俺は立花を差し置いてすぐさま走った。
「お、おいっ!待てよな」
足の速い二人はすぐさまに学校に着いた。
だけど一つ大きな問題が起きていた。
「どうするか…」
門の1メートル前で二人は止まっていた。
「門がふさがっとる」
飛び越えようにも前には生活指導の戸田力(通称とっつぁん)が立っていた。
ボッコボコにやって入るのは俺様にとって何の問題もない。が、不良女にだけは見つかりたくない。
「なあ紫水、どうす…」
横を見ると、紫水の姿が忽然と消えていた。
「あん?どこ消えやがったアイツ」
俺はぴょんぴょんと左右に跳ね、辺りを見渡した。
「あんの野郎、また消えやがった」
「立花ー」
どこからか紫水の声が聞こえた。
声の方へと向かってみると、ボロイフェンスの前で紫水が立っていた。
「何やってんだ、お前?」
「んでもいいからペンチ寄こせ」
手を差し伸べられたがペンチなんて常識的に持っているはずがない。
「そんなの持ってるわきゃねえだろ」
「嘘つき」
そういうと紫水は俺の腰に手をあてた。
「あんだろ?こ・こ・に」
手からはペンチが出てきた。
「凶器メカ野郎が持ってねぇわきゃねえもんな」
そう、俺は常日頃からペンチやカッターを持っていた。何故ならば、バイクの修理に使うからである。
断じて、暴力に使うわけではない。
「立花、どこ向いてさっきからブツブツ言ってやがる」
紫水は立花を哀れんだ目で見つめた。
「ほら開いたぞ。早く入りやがれ」
二人が席に座って寝ていると、勢いよくドアが開いた。
「紫水と立花ー、さっさと出てこいやー!」
紫水達の一学年上、三年が乗り込んできた。
が、二人は起きなかった。
「そこのメガネー、紫水と立花起こさんかい」
「は、はい」
と言って二人を起こそうとするものの、ビクともしなかった。
「早く起きろやゴラー」
キレた三年の一人が、立花の椅子を蹴飛ばした。
そして立花は壁に勢いよくぶつかった。
「…って〜」
立花はムクリと立ち起きた。
「やっと目覚めたか」
ぞろぞろと三年が教室に入り込んだ。
「誰だよあんた」
「誰だっていんだよ!お前ら目立ちすぎなんだよ」
最近やたらこういういちゃもん多いんだよな。
「今眠ーからあとに…」
と話してる途中に寝始めた立花。
「なめやがって!」
突然殴りかかろうとした三年を、寝ぼけているにも関わらず立花は拳をグッと掴んだ。
「先輩、寝ぼけてる相手に突然襲い掛かるのはないっしょ」
掴んだ手の握力は段々と強さを増した。
「痛ててて……」
だが立花はすぐに手を離した。
離した途端、腕を押さえながら後ろへと後ずさった。
「あんたらダルいよ。さっさとこっから失せろ」
さっきまでとは違う不機嫌そうな面に、三年はその場から立ち去っていった。
すると、後ろから笑い声が聞こえた。
「あーひゃひゃひゃ」
その笑いの主は、勿論紫水だった。
「なーにが、「あんたらダルいよ。さっさとこっから失せろ」だよ。カッコつけちゃってまあ。お前決まった!とか思ったろ」
図星すぎる言葉に、立花の顔は一気に真っ赤になった。
「うっせーな紫水!テメーにゃ関係ないだろ。てか起きてたんならお前も相手しろや!!」
「ヤダ」
拍子抜けするほどの即答な返事に、立花の髪は萎れていった。
「あっそ」
呆れた顔をしてる立花にたいし、紫水はひょうきんな顔をしながら数秒で眠りについた。
「よく寝るよ」
立花はフッとにこやかに笑った。