夢を見ていた。

□棚ぼたな恋
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俺と唯が出会ったのは、丁度2年前。


俺が目茶苦茶荒れてて喧嘩ばかり繰り返していたある日のことだった。


一人の生徒が俺のせいで入院することになってしまったのだ。


その生徒というのがかなり有名な財閥の跡取り息子だったようで、俺は理事長直々に呼び出しを喰らってしまった。


別に退学になろうとどうだってよかったから、理事長に説教されても決して謝ったりはしなかった。


テキトーに相槌だけ打って、聞き流してやった。


勿論理事長がそんな俺の態度を許すわけがなく、俺を退学処分にすると言って顔を真っ赤にして赫怒してしまった。


あー俺ついに退学になるんだな、なんてどこか他人事のように考えながら「今までお世話になりました。」と口にして俺が理事長室を後にしようとした、その時だった。


息を切らして額に汗を浮かばせた綺麗な青年が「待って下さい!」と叫びながら、理事長室に駆け込んできたのだ。


いきなりの乱入者に俺と理事長が目を点にしたのも束の間。


その綺麗な青年は物凄い勢いで理事長に近付いて行って、一枚の書類を突き付けた。


「理事長!友村君は何も悪くありません。友村君が病院送りにしてしまった生徒は凶器の刃物を所持していたらしいです。それを突き付けられた友村君は、正当防衛としてその生徒に暴力を振るっただけであって、罰せられるべきなのは友村君ではなくその生徒なんです。目撃証言が多数寄せられてますし、証拠が必要だと言うのならこれを調べて下さい。」


綺麗な青年はそう言って、袋に入った刃物を理事長に手渡した。


「この刃物の指紋を調べたら必ず友村君に病院送りにされた生徒のものが検出されるはずです。これでも証拠不十分だと言うのなら、目撃者である生徒が撮影した携帯動画もあります。」


すごい剣幕で捲し立てる青年の勢いに負けたらしく、結局理事長は俺への処分を3日間の自宅謹慎へと切り替えた。


俺は別に退学になろうがどうだってよかったんだけど、俺の為にその青年が必死になってくれたことが嬉しくて仕方なかった。


それ以降俺は青年とよく話すようになった。


彼の名は篠原唯――そう、現在俺の最愛の恋人である唯のことだ。


話していくうちに俺と唯はどんどん仲良くなって、急速に距離が縮まっていった。


そして出会ってたった半月で俺達は付き合うことになったんだ。


ちなみに後になって聞いた話なんだが、唯はずっと前から俺のことが好きだったらしい。


それで俺が怪我をさせてしまっては不味い生徒を病院送りにした、という噂を聞いて俺の無実を証明しようと必死で学園中を走り回ったんだとか。


その話を聞いて更に唯への愛を深くした俺が、勢い余って唯を押し倒してしまったのは懐かしい思い出だ。



 
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