夢を見ていた。
□棚ぼたな恋
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「おはようございます、友村君。こんな朝早くから屋上に来てるんですね!」
俺が清々しい気分で朝の少し涼しい陽気を堪能していると、いきなり記憶に新しい声が聞こえてきた。
「…テメェたまにって約束したくせに、何で昨日の今日で来てんだよ。」
「だって早く友村君に会いたかったんですもん。」
「…わりぃけど、今日はお前に構ってやってる時間なんかねぇよ。もうすぐ唯が此処に来るんだからな。」
「え、篠原先輩が此処に来るんですか?」
「あぁ、ってなわけで邪魔者はさっさと帰れ。」
俺がそう告げたのと同時に、屋上の扉が開いた。
「おはよう、智樹(サトキ)。…って、あれ?君は誰?」
一昨日ぶりの恋人との再会に自然と顔が綻んでしまう。
「おはよう、唯。こいつはあの優等生で有名な堺だ。」
「ああ、君があの有名な堺君ね。本当に綺麗な顔してるんだね。」
「…いえ、篠原先輩ほどじゃないですよ。」
「僕は綺麗なんかじゃないよ。それにしても、何で君が此処にいるの?」
「あ、それは…「ちょっと色々とあってさ。これからはたまにこいつも屋上にいるかもしれねぇけど、あんまり気にしないでくれ。」
堺が余計なことを言う前に、俺はさり気なく口を挟んだ。
「うん…、わかった。」
あぁ、まずいな。
今一瞬唯の表情が曇った。
さっさと堺を屋上から追い出して、二人きりでしっかりと話をするべきだよな。
「おい、堺。さっきも言ったけどさっさと出てけよ。俺は唯と二人きりで話がしたいんだ。」
「…はい、わかりました。邪魔してしまって申し訳ございませんでした。では、失礼します。」
そう言って屋上を後にしていった堺の顔色が悪かったように見えたの気のせいだよな、多分。
第一あいつの顔色が悪かろうと俺にとってはどうでもいいことだし。
とにかく、今は。
「唯、おいで。」
愛しい人との時間を満喫するべきだ。
「…あのさ、僕も智樹とくっついていられるのは嬉しいんだけど、膝の上に乗るのはさすがにちょっと…。」
「何だよ、唯は俺とくっついてたくねぇのか?」
「いや、そんなことはないんだけど…。」
顔を真っ赤にしながら俺の膝の上に座ってる唯のことが愛しくて堪らない。
可愛い、恋しい、――愛しい。
あぁ、俺はお前のことが大好きすぎて狂ってしまいそうだ。
「あのさ、智樹?」
「ん?」
「どういう経緯で堺君が此処に来ることになったのか大体想像つくから聞かないけど、…あんまり仲良くなりすぎないでね?」
「…当たり前だろ。ったく、嫉妬してる唯も可愛いな。」
「な、嫉妬じゃないし!」
「照れんなって。…俺には唯だけいればいいし、他なんか全く眼中にねぇから安心しろ。」
「智樹…。そうだね、僕も智樹以外どうだっていいよ。」
そんな可愛いことを言いながら唯は俺に抱き着いてきた。
もう本当に唯が愛しくて愛しくて、大好きすぎておかしくなりそうだ。