Short stories
□貴方に首ったけ!
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「うわーこの服シルクですよね!高級そう!」
「………」
「あ、カーペットに染みが。またワイン溢したんですか?」
「………」
「あれ?伯爵、壁紙変えられたんですね!この柄とても素敵で…」
「ねぇ」
さすがにイラついてきて、ボクは声を出した。
「はいっ!何でしょうか伯爵!?」
クラエスはメイド服を翻し、光を飛ばしながら満面の笑みで振り向いた。
「ボクの部屋に来る度にいちいち部屋中を観察するの止めてくんない?鬱陶しい」
「えぇ、そんな。私の楽しみが1つ減りますよ!」
「そんなのどうでもいいから。それに今真夜中だし。来る時間考えて」
「ちゃんと考えて来ましたよ。昼間じゃ伯爵お仕事で忙しいでしょう?」
至極真面目な顔で言ってくるクラエス。
こんな生意気な使用人は初めて見たよ。
「だからさぁ…昼間の忙しさ知ってんなら夜はゆっくりさせてって言ってるんだよ!」
「お休みになるなら私に構わず遠慮なくどうぞ!部屋見たら勝手に出ていきますから!」
「いや、そういう問題じゃない!ボクが気が気でならないの!」
部屋を荒らされたら堪らない。
というか普通の使用人ならそんなこと絶対しないけど、クラエスならやりかねない…!
「伯爵、お疲れですか?」
「君のせいなんだけど分かってる?分かってないよね絶対?」
何なのこの天然は。
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