Short stories
□怖くない
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皆の寝静まった夜。
とある屋敷内の、巨大な柱時計が鐘を鳴らす。
針が示す時刻は午前2時。
ふと、音のしない廊下に灯されていた蝋燭が消えた。
ひたひたと、怪しい気配が忍び寄る。
人一人いないはずのそこには、不気味な影が…
「…ってちょっと!!変なナレーションから始めないでよ!!」
「えー?いいじゃないですか」
「いいじゃなくない!!」
クスクス笑うグレイ邸のメイドを睨み、ボクは彼女の袖を固く握った。
大体なんで別室に書類忘れてきたのを寝る直前になって思い出すんだよボク…!
「べべべ別に怖いとかそんなんじゃないからね!ごごご誤解しないでよ!」
「……………はい。分かってますよ?」
「何その間!?」
メイド…クラエスは、相変わらず笑顔で言った。
…完全に楽しんでる。
「そしてその影は廊下の端から順に部屋の扉を開け、中に眠る人々を次々と…」
「続き話さなくていいから!!」
「もう、伯爵。私が見回りしていなかったらお一人で書類を取りに行かなければならなかったのですよ?これくらいで怖がっててどうするんです?」
「ち、違うからね。ボクはクラエスが怖くないように腕組んでるだけだから」
「怖かったら見回りなんてしてませんけどね」
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