Short stories
□黒死神の憂鬱、その後
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今日もスピアーズ先輩は陰から監視を続けていた。
周りに不審がられようがまったく気にしていない。
先輩の目には、その後輩しか映っていないのだから。
***
「ぶっちゃけ鬱陶しい」
スピアーズ先輩のお気に入りの死神は、俺の向かい側でうんざりした表情を作った。
「やっぱりね…」
俺も毎度のことを思い、呆れてため息をつく。
休憩室の一角にあるテーブル。
その向かい側に座るクラエスは、自身のファイルをぎゅっと抱き締めた。
「ねぇロナルド…私いつまで先輩に子ども扱いされるのかな…」
いや、その顔がもう拗ねた子どもみたいだから。
…とは言えず、俺はただ頭を掻いた。
「(いつまで、か…)」
両思いなのになんて焦れったい関係なんだ。
クラエスもクラエスで自分だけ特別扱いされていることから察せないのかよ。
「それでも好きなんだろ?なら、もう告ればいいんじゃね?」
そう言ったら、クラエスがぼわっと顔を赤らめた。
素直で可愛いなぁ。
「だ、だって…スピアーズ先輩、社内恋愛は禁止とか言ってきたんだよ?なのに先輩が好きとか…真面目に聞いてくれると思う?また子ども扱いされて流されたりしたらさすがに凹むし…」
「(あぁ、確かに前そんなこと言ってたな…)まぁそれでも言わなきゃ気付かないっしょ、あの堅物は」
顔を赤らめて迷うクラエスに、少し頬が緩んだ。
「…こんなとこスピアーズ先輩に見られたら殺されるだろうな…ってぇッ!?」
「きゃっ!?」
視界の端で何かがキラリと光った。
反射的にのけ反った瞬間、俺の金髪が数本宙に舞った。
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