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□どこへでもいくよ、
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「…おやすみなさい」
まだ幼い少女は、墓石を撫でながら細い声で呟いた。
どこへでもいくよ、
少女は参列者の中で一番幼かった。
なのに一番落ち着いていて、かつ、涙を全く流さなかった。
「変わった子だねぇ…」
葬儀の様子を眺めながら、小生は小さく独り言を漏らした。
でも、ああいう子を見るのは初めてじゃない。
死を受け入れられていないか、悲しみを知らないか、もしくは何とも思っていないか。
まぁ、人間なんてそんなものさ。
「(さて、小生の仕事はお仕舞い)」
式も埋葬も済んだ。
もうやることはない。
参列者も皆帰ったし…と思ったところで、ふと人影を見つけた。
あの少女だ。
「(何してるのかなぁ)」
ちょっと気になり、そっと近くに寄って目を凝らす。
少女は1人で墓石の前に立ち、真剣な目で足元を眺めていた。
と思ったら、
ざくっ
「(…わあー)」
土を掘り始めた。
シャベルはすでに片付けてしまっていたので、素手で一生懸命地面に穴を開けている。
健気、と言えば聞こえは良いものの、
「墓荒らしは良くないよぉ、お嬢ちゃん」
「!」
止めないわけにはいかないよねぇ、流石に。
少女は手を止めて小生を見ると、驚きというより安心したような顔になった。
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