Red & Beautiful memory
□W.A hidden face
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指名されたエリザベスがステージに上がり、シエルはようやく真剣にパフォーマンスを見始めた。
「坊ちゃんも参加してみたかったですか?エリザベス様に嫉妬してはいけませんよ?」
「そんなわけあるかッ!」
からかってくるセバスチャンをカッと一喝し、隻眼を壇上に戻す。
少し戸惑うエリザベスに、Kは膝を折って丁寧に語りかけた。
「どんなに長くても結構です。彼にお好きな言葉を小声で言い聞かせて下さい」
籠の中の鳩を“彼”と呼び、優しく説明する。
「本当に何でも良いのかしら…?」
「ええ、何でも」
エリザベスににっこりと笑いかけると、Kはスッと立ち上がって観衆に向いた。
「私は数メートル離れ、かつ耳を塞ぎます。こちらのお嬢様には言い聞かせた言葉をボードに書いて、皆様にだけ見せて頂きます。彼の能力が本物かどうかの証人は、皆様となるのです」
そこから3メートルほど離れ、Kはエリザベスに背を向けて耳を塞ぐ。
「…えーと…」
少し考えた後、エリザベスは困惑気味にボードに文章を書いた。
『God save our gracious Queen,
Long live our noble Queen,』
「国歌の一部ですね」
「ああ」
セバスチャンが小声で言い、シエルが頷く。
観衆の確認の後にボードが回収され、エリザベスは籠の中の鳩と向き合った。
小さく屈んで鳩に顔を近付け、
「───…」
本当に小さな声で、そっと言葉を発した。
「エリザベス様はきちんとボードに書いた通りの言葉を仰っていますよ」
セバスチャンがシエルに耳打ちする。
彼(悪魔)だからこそ聞き取れたものの、観衆、そして壇上にいるKには確実に聞こえない程、その音量は小さなものだった。
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