Red & Beautiful memory
□]V.Dealings
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「あーやっとヒビ入った…!」
グレルが若干疲労気味に声を上げた。
結界を壊すのに予想外に手間取っている状況に、少し焦りを覚え始める。
ロナルドも一旦デスサイズを置き、呼吸を整えた。
「2人は大丈夫っスかね…」
結界越しに廃墟を見上げ、ロナルドはズレた眼鏡を掛け直した。
その横で、グレルがちらりとセバスチャンを見やる。
「ねぇ、セバスちゃん?よっぽどじゃなければちゃんとカナタも助ける気はあるんデショ?」
「そうですね」
疲れなど知らないような涼しい表情で、セバスチャンは新たなシルバーを構えながら言った。
「カナタがいるだけで、使用人達の世話の負担が大分軽くなりますから。いなくなられるのはそれなりに困りますね」
「あんっ、流石セバスちゃん!ありがと!」
喜ぶグレルを見て、セバスチャンが不満げに目を細める。
「…協力に感謝されてはいるようですが、その割に死神界(そちら)の詳しい事情は教えてくれないのですね?」
「無理に聞き出そうとは思わないって言ったのはアンタじゃない」
グレルはそれ以上何も言わなかった。
セバスチャンも深く追求しようとはせず、シルバーを投げようと再び結界を見据えた。
直後、
ガッシャアアアン
何かが崩れたような大きな音が響いた。
明らかに廃墟から聞こえたその音に、3人が動きを止める。
「…今の音、何」
グレルが警戒するように廃墟を睨む。
しばらく3人とも声を出さず、辺りの様子を窺っていた。
冷たい風が吹き、木々をざわざわと揺らす。
「っ!」
不意にセバスチャンの身体が動いた。
一瞬、瞳が微かに光る。
「…イエス、マイロード」
そう呟くと、セバスチャンの口元に不気味な笑みが浮かんだ。
持っていたシルバーを放り投げ、廃墟を見つめたまま胸に手を当てる。
「お二方、私今からマジになりますので、少し離れていた方がよろしいかと」
グレルとロナルドが返事をする前に、セバスチャンの周りに黒煙が舞い出した。
死神にとって猛烈に嫌な臭気が辺りに広がる。
「うっ、わ…」
ロナルドが袖で口を覆った。
「はぁー…やっぱ怖い」
グレルの呟きと同時に、黒煙が渦を巻いた。
結界の割れる音が響いた。
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