Red & Beautiful memory

□]W.An unsolved end
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雲に覆われていた月が姿を現した。

地面に飛び散ったガラスの破片が月明かりを映し、へたりこむカナタの周りで微かに光を放つ。

「大丈夫ですか?カナタ」

「あっ…」

真っ暗だった視界に突如現れた灯りに、呆然としていたカナタがハッと我に返る。

灯りの正体は、セバスチャンの持つランタンだった。

「セ…セバスチャン、さん?い…」

今のは一体、とカナタは震える声で聞こうとしたが、

「ハーイ!お疲れー!」

「!?」

突然のグレルの大声に遮られ、それは叶わなかった。

「カナタもお疲れ様!なかなか楽しかったわヨ?」

「ええ…?」

にっこり笑顔で話し掛けてきたグレルに、カナタは困惑の表情を向けるしかなかった。

「何なんですか、お疲れ様って…」

「おや、グレルさんから聞いていなかったのですか?」

セバスチャンがカナタの横に膝をついた。

「リハーサルですよ。映画の」

「え?」

「言ったでしょう?彼らはアクション映画で広く活躍されているスタントマンだと」

セバスチャンがグレルとウィリアムに視線を移す。

グレルがどや顔で立っている横で、ウィリアムは不審げに眼鏡を上げた。

「映画?何を言っているのです?今のはれっきとした冥界の魔物であり、我々は今ヤツの送還を行っ…」

そこまで言って、ウィリアムは言葉を止めた。

“合わせなさい”

グレルとセバスチャンの鋭い視線にそう促され、ウィリアムがうぐ、と唸る。

「というストーリーだったわけヨ!なかなかの迫力だったデショ?」

グレルがカナタに向き直って言ったが、カナタはまだ焦ったように表情を曇らせていた。

…最初の予想は合っていたらしいが、何だか納得いかない。

「でも…さっきの黒いのは…?それに円陣みたいなのが光って…」

「全部仕掛けに決まってるじゃない」

「仕掛けってどんな…」

「はいはい!こっからは企業秘密よ!」

話を切ろうとするグレルに、カナタがムッとしたように眉を潜ませた。

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