翌日の朝。
「本っ当にすみません…」
ファントムハイヴ家には、セバスチャンに頭を下げるカナタの姿があった。
「やれやれ…昨日も言いましたが、バレてしまったものは仕方ありませんよ」
顔を上げなさい、とセバスチャンはカナタに言った。
カナタが申し訳なさ気にセバスチャンを見る。
「ごめんなさい…以後気を付けます」
「そうですね。とりあえずは、グレルさんに口止めしておくしかないでしょう」
セバスチャンがカナタを見た。
「まぁ、あの方が言いふらすとは思えませんが」
「そうなんですか…?」
「あの方は特殊なので。色々な意味で」
「?」
カナタがきょとんとすると、セバスチャンが意味深に笑った。
「また今日辺りに来るでしょう。会ったら言っておきなさい」
「え、分かるんですか?」
「嫌な気配がするので」
「…あ、あの、セバスチャンさん」
「何でしょう?」
「なんか喜んでません?」
「厄介者が遠退いて喜ばない者などいますか?」
「………」
セバスチャンがクス、と笑い、カナタに背を向けた。
「しっかり伝えておいてくださいね?カナタ?」