Red & Beautiful memory
□V.Investigation beginning
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「おはようございます、カナタ」
「…あれ」
カナタは目をぱちくりとさせた。
「セバスチャン…さん?」
ベッドから体を起こして辺りを見回す。
ここは明らかにファントムハイヴ邸の自室ではない。
そして、ロンドンに出かけたはずのセバスチャンが目の前にいる。
「大丈夫ですよ。朝起きたらロンドンにいた、なんてよくあることですから」
「(いやいやいや…)」
よくあることではないだろう、とカナタは思ったが、寝起きでいまいち頭が回らない。
「私…いつの間に移動したんでしょうか…」
「はい。昨夜の内にファントムハイヴ邸から拉致らせて頂きました」
「は?」
さらりとそう言ったセバスチャンに、カナタが目を点にした。
「“今すぐ”というのが坊ちゃんの命だったもので。無断で女性の部屋に入ってしまい申し訳ありませんでした」
「い、いえ……?」
状況の掴めない内に勝手に謝られ、カナタが曖昧な返事を返す。
その時、
コンコン
「カナタ、起きたか?」
ドアがノックされ、シエルの声が聞こえてきた。
「坊ちゃん、今起きたところですよ」
セバスチャンが代わりに返事をし、カナタに向き直る。
「カナタ、着替えてから来てください。あ、いつもの制服ではなく、そこにある服ですよ」
セバスチャンはそう告げると、早々と部屋を出ていった。
「服…?」
その後、服を手に取ったカナタは、不思議そうな顔で首を傾げたのだった。
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