Red & Beautiful memory

□\.Set trap
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──静かだ。


カナタは口には出さずに心の中で呟いた。

いくら扉や壁が鉄でできていると言えども、少しくらいは賭場からの物音がしてもいいはずだ。

なのに、この部屋に入ってからは、まるで空間が切り取られているかのように外部からの音が全く聞こえてこない。

ただ、焚かれている香炉の煙と、頼りない蝋燭の明かりだけが仄かに揺れていた。

異様な沈黙の中、テーブルを隔ててカナタと向かい合っている女性が口を開いた。

「…流石」

女性は薄く微笑むと、カナタの前に積まれたコインを見た。

「数えるまでもないわ。これらを換金したら、貴女に媚びる人間が一体何人出るかしらね?」

笑える冗談ではない。

カナタは女性を軽く睨んだ。

「お金は要りません。私が聞きたいのは…」

「分かってるわよ」

女性はクスクスと笑いながらゲームの道具とコインを片付けた。

「(早く出たい…)」

香の匂いが鼻をつき、薄暗い明かりに目が疲れる。

カナタは一刻も早くこの部屋を出たかった。

「…さて、約束通りお話ししましょうか」

女性は手のひらを組むと、青い瞳を真っ直ぐカナタに向けた。

「これはね、貴女のようにこの賭場で優秀な稼ぎを得た人間だけが掴み取ることの出来るチャンスなの」

「それは、どのような…?」

カナタが聞くと、女性は金髪を揺らして首を傾けた。


「貴女には、消したいくらい憎い人間はいない?」


女性ははっきりとそう言った。

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