short

□Happy valentine
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不二 ver.






今日は日本中の女の子、
男の子が一喜一憂する日

楽しみな人にも憂鬱な人にも
容赦なく訪れる


私は今年からめでたく
憂鬱な人へ仲間入りをしました





…いや、全然めでたくなんかないか






そんな私の最近の
一番の悩みの種である日が
とうとう来てしまった



そう、今日は
年に一度のバレンタインデー


本命だ友チョコだ逆チョコだって
二月に入ったときにはもう
そんな話題で持ちきりだった


休み時間には雑誌を開いて
恋バナに花を咲かせている女子達

何個もらえるか予想ランキング
なんか立ててる男子達


去年まではバレンタインなんて
全然興味なかったのに


楽しみなわけでもなく
憂鬱なわけでもなく
他となんらかわらない一日だった



でも、それは去年まで…
今年はそうも言ってられない






原因は、同じクラスの不二くん


彼は物凄くモテる
とにかくモテる

テニス部でテニスは天才って
呼ばれるくらいとってもうまくって
頭もよくて、優しくて


おまけにイケメンときた


モテるのも当たり前だと頷ける
世の中の女子がほおっておくわけがない

うん




私は恋愛なんて興味なかった

その人のことで嬉しくなったり
悩んだりなんて理解できなくて…

正直付き合うとか別れるとか
面倒くさいと思ってた


でも、今は違う



彼と隣の席になったり
たまたま帰りが一緒になったりと
思いがけない偶然が重なったり

掃除を手伝ってくれたり
優しく微笑んでくれたり
何かと話し掛けてきたりする彼に
だんだんと惹かれていった私



そして恋をしてしまった私は
今、史上最強に悩んでいた


なんで悩んでいるのかは…

チョコをあげたいけど
他のたくさんの女の子のチョコと
交ざりたくないから
なんていう何とも可愛くない理由


なんとか特別なチョコを…と思って
空っぽの頭で必死に考えたけど
案の定全部ボツ


派手にするなんて他の子が
とっくにやってるし
メッセージカードなんて
何書けばいいかわからない



それに……

ただでさえ
他の女の子からのチョコで
一日忙しそうだっていうのに
私が渡すなんて迷惑


そう、これがホントの理由




好きだから

彼の負担にはなりたくないの


好きだから






「ねぇ」


『え?』


不二くん、だった
今一番会いたくない…けど
会いたかった人


「今、帰るところ?」


『え、う…うん
私帰宅部だしすることもないから
不二くんは、部活だよね?』


震える声を押さえて
なんとか、笑顔を作る


「そうだよ
でも、ちょっと忘れ物をね」


『そっか。じゃぁ私は帰るけど…
不二くんは部活頑張ってね!』


これ以上話していたら
涙が出そうだったから

無理矢理作った笑顔で手を振った


結局、作ってこなかった私

情けない

そう思って俯いた私を「待って」と
不二くんが引き止めた



「待ってよ
僕の忘れ物っていうのはね…
君がいないと、ダメなんだ」


『?』


「あれ、分からない?
…チョコちょうだいって
言ってるんだけど」


『………はい?
チョコって、
バレンタインチョコ?』


「他にどのチョコがあるの?」


『そ、そうですよね〜
でも………何で?』


「君からのチョコが欲しいんだ」


『??…でも不二くん
他に一杯貰ったでしょ?
私のなんていらないじゃん』


「貰ってないよ
今年は初めから、君のだけ
貰うつもりだったから」


『はい?……え、え、
意味が分からないんですけど…
断ったのに私のだけ……?』


「クスッ焦った顔もいいね
それにホント、鈍感だなぁ」


『??どういうこと?』


「分からないみたいだから
はっきりいうね





僕はあゆが好きだから、
あゆからのチョコが欲しい」



…………え、ぇぇぇ!!?


「クスッ、驚きすぎ
…ねぇ……頂戴?」


『いや、そんな笑顔で
おねだりされましても……』


「え?チョコないとかいわないよね?
まさか、君に限って…ね?」


『あ、あぁ〜えっと……
あ、そうだ!
ちょ、ちょっとトイ―「ちょっとコンビニに行って買ってくるなんて、まさか君に限ってあるはずないよね?」』


『…あ、あはは……
…………スミマセン』


いや、なんで私謝ってるんだろ
私悪くなくね?
というかチョコって
催促するものなの?

ん?

そういえばさっき私のこと
好きとか言ってませんでしたか?


『あ、あの不二くん
私の聞き間違いだと思うんですけど
さっき私のこと好きとか…』


「酷いなぁ
僕の人生初の大事な
告白を聞き間違いだなんて」


……ば、ばっちり聞こえてましたぁぁぁぁぁあ!!


「クスッ
そう、よかった
あゆは……どうなの?」


『え……』


急に不安そうな顔になった不二くん
さっきまで余裕そうに
催促していた人物と
同一人物なんて理解に苦しむ


でも、彼のこんな一面は
初めてだと思った

また、私の心臓がトクンと高鳴る


「僕のこと、好き、かな?」


『……………………うん』


「好き?」


『……………………うん』


「好きなの?」


『…………………好き、です』


「そっか、よかった
ありがとう
僕も大好きだよ」




そういって微笑んだ不二くんは
やっぱり綺麗で、
やっぱり好きだと思った





Happy valentine!







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さて、チョコを作ってこないなんて
全くいい度胸してるね
代わりに何かくれないの?


え、…ない?




そう、じゃぁ








君のファーストキスを頂くよ









―chu……









それはチョコよりも甘い、



甘いキスでした




.

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